研究最前線

これまでの実験の経過と成果

 将来の核融合発電炉の炉心となる高温プラズマには、燃料となる重水素と三重水素が核融合反応を起こすために、1億度以上のイオン温度と1ccあたり100兆個以上の密度が同時に求められます。LHDでは1998年3月31日のファーストプラズマ点火から今日までの軽水素を用いた13年間の実験で、プラズマの性能をこの条件に近づけるとともに、核融合炉のもう一つの条件である定常運転では世界の先頭を切っています。イオン温度は中心密度16兆個/ccの水素プラズマで7,500万度にまで加熱することに成功しています。密度で言えば、条件の10倍以上となる中心密度1,200兆個/ccを400万度という低い温度ながら達成し、核融合炉の製作が容易な温度の低い運転を可能とする革新的な設計に展望を拓いています。さらに定常運転に関しては1,200万度の温度を持つ高温プラズマを1時間保持し、ヘリカル方式の特長とする定常運転を実証しました。また、炉の経済性に決定的なプラズマ圧力と磁場の圧力の比(ベータ値)をヘリカル方式では世界で初めて5%以上に高めることに成功しました。これらの高性能プラズマを対象として、その精密な理解、新たに発見された物理機構の解明、法則化などによって、核融合炉の設計に必要な学理としての体系化を進めています。

●パラメータの達成値

 下のグラフはこれまでのLHDで生成されたプラズマの温度の年次変化です。核融合条件の目安はイオンの温度が1億度ですが、電子の温度もイオンの温度を支え、あるいは冷やさないために高いことが必要です。加熱装置の整備と新しい物理機構の発見が相まって向上してきています。


●第14サイクル実験('10.Oct〜'11.Jan)

 第14サイクル実験では大きな成果としてプラズマ性能の向上に関するものが二つありました。実験期間中に7,100回のプラズマ放電を行い、これらの高温プラズマに関する物理の理解を高める成果や今後の展開を図る上で確かな手ごたえとなる実証成果を数多く上げることができました。プラズマ性能の向上として、イオン温度が7,500万度(昨年度までは6,500万度)、また電子温度が2億3,000万度(昨年度までは1億7,000万度)を達成することができました。これらは別々の放電条件で得られたものですが、核融合条件を間近に見込める領域になっています。それぞれの温度と密度のプラズマ中の分布を図に示します。
 温度を上げるためには加熱電力を増やすことと、プラズマから熱が逃げないように断熱することの両方が必要です。プラズマは電子とイオンから成っており、それぞれに固有の性質を利用した加熱方法があります。イオンについては5万ボルト程度の電圧で加速した水素原子ビームをプラズマに入射する方法が有効です。第14サイクルに向けて整備改良を進め、イオンに対する加熱電力を5割程度増やすことができるようになりました。これにより、イオン温度をこれまでよりも1,000万度高めることに成功しました。この運転では、図にあるようにイオン温度が電子温度よりも高くなります。

 一方、電子を加熱する手段としては77ギガヘルツの周波数を持つマイクロ波を発生するジャイロトロンと呼ばれる装置を用いています。強力なマイクロ波をプラズマに入射すると、磁場中の電子の回転運動と共鳴し、電子を加熱します。この装置についても最適な運転方法を研究し、1本のジャイロトロンから世界最高性能の1,800キロワットの加熱電力を発生できるようになりました。3本のジャイロトロンを用いて、電子温度についても大幅の記録更新をすることができました。この運転ではまだ、密度は2兆個/ccと薄く、イオン温度も約1,000万度程度ですが、今後の進展が期待できます。
 これらの温度の高い状態は外からの加熱だけでなく、プラズマが自ら熱を逃がしにくい形を取ることが重要であり、そこではプラズマ中の回転する流れを作ることが鍵であることが分かってきています。この物理機構を明らかにして、加熱の手段やプラズマ密度の制御を改良することによって、より高い温度のプラズマ生成に活かしていきます。
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