研究最前線

これまでの実験で得られた成果

 将来の核融合発電炉の炉心プラズマには、燃料となる重水素と三重水素が核融合反応を起こすために、1億度以上のイオン温度と、1ccあたり100兆個以上の密度が同時に求められます。LHDは、1998年3月31日のファーストプラズマ点火から今日に至る軽水素を用いた14年間の実験で、プラズマの性能をこの条件に近づけてきました。特に核融合炉に必要なもう一つの条件である「プラズマ持続時間」に関しては、1,200万度という高温プラズマの1時間保持を達成し、ヘリカル方式の特長である定常運転を実証しました。イオン温度は中心密度13兆個/ccの水素プラズマで8,000万度、密度は核融合に必要な条件の10倍以上となる1,200兆個/ccを達成しました。これはプラズマ電流による制約を受けるトカマクでは達成が極めて難しい値で、「ヘリカル系における低温・高密度プラズマによる自己点火へのアプローチ」という新たな運転領域を開拓しました。また、炉の経済性を左右する、プラズマ圧力と磁場の圧力の比(ベータ値)をヘリカル方式では世界で初めて5%以上に高めることに成功しました。下の表に、LHDでこれまでに得られたプラズマ諸量の達成値を示します。


第15サイクル実験('11.Jul〜'11.Oct)

●最高イオン温度更新

 第15サイクル実験では、期間中に約7,200回のプラズマ放電を行い、プラズマ中心のイオンの温度が8,000万度を超える高温のプラズマを生成すること成功しました。この値は、定常方式の実験装置で得られた世界最高記録です。これまでの最高は7,500万度でしたので、核融合エネルギー実現を見込むために必要な1億度以上の目標にさらに一歩近づいたことになります。右図にその時のイオン温度のプラズマ中の分布を示します。

●ガス制御に関する新しい知見

 今回の最高イオン達成は、もう一つ重要な研究成果を包含しています。イオン温度は前回の実験サイクルより500万度上昇しましたが、通常、温度上昇に最も寄与すると思われるプラズマ加熱電力は前回と同じです。私たちは今回のイオン上昇の要因は、プラズマ周辺部に漂う残留ガスの制御に成功した点にあると考えています。金属や炭素で覆われた真空容器の表面は、実験を繰り返す中で、プラズマ生成用に導入したガスを吸収します。この吸着されたガスは放電中(プラズマ生成中)に表面から放出されてプラズマと真空容器壁の間を漂い、再び電離されてプラズマになります。このためプラズマの端(周辺部)では密度が上昇し、温度上昇を阻害する原因になっていました。中心部の温度を上昇させるためには周辺温度を低く抑え、加熱パワーがプラズマ中心まで効率よく届くようにすることが必須です。第15サイクルでは、強力な加熱放電を行う前に、低いパワーの電磁波で生成したプラズマを真空容器壁に当て、吸着したガスの除去を試みました。この実験手法によって、下図に示すように周辺部において密度の低下が確認され、上図に示した最高イオン温度を得ることができました。最高イオン温度の達成とともに得られた「ガス制御に関する新しい知見」は、後述の「ヘリカルダイバータの閉構造化」とも関連し、今後、研究の進展が期待されています。
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