核融合工学研究プロジェクト

 核融合工学研究プロジェクトでは、ヘリカル型核融合エネルギー原型炉に向けての詳細設計と核融合炉の製作に必要な工学研究を行っていきます。ヘリカル方式はプラズマ電流を必要としないため、定常炉として成立するための優れた特性を持っており、このことを十分に生かした設計が重要になります。具体的な活動では、超伝導コイルシステムの最適な構造を探るための研究や、効率の良いプランケットや第一壁とそのための冷却方法の検討など、炉心設計と高度な整合性を取りながら進めています。また、大学の核融合工学研究の中核として、国内外の共同研究と協力して炉設計の高度化研究を進めるとともに、基礎となる学際領域の研究拡充の図っていきます。

●大型高磁場超伝導マグネットシステムに関する研究

 核融合炉の大規模超伝導マグネットシステムには、100kA級の大電流高性能超伝導導体が要求されます。そこで、金属系低温超伝導材料であるニオブ3スズ、ニオブ3アルミや、酸化物系高温超伝導材料のイットリウム系などの線材を最適に組み合わせた大電流導体の設計研究を行っています。また、極低温、強磁場や中性子照射などによる超伝導マグネット材料の特性の研究を実環境試験によって進めています。
 一方、核融合装置の大型超伝導コイルでは、巻線導体やコイル容器に巨大な電磁力が印加されます。電磁力によって材料にかかる応力を正確に評価し、安全に支持する構造の研究をしています。合せて、超伝導マグネットシステムも巻線・製作方法についての工学設計を進めています。
9テスラの強磁場環境を発生する
超伝導スプリットコイル
(サンプルには75kAの通電が可能)

●低放射化構造材料の研究

 ブランケットに用いる構造材には、中性子照射によって生じる誘導放射能の減衰が早い材料(低放射化材料)を用いる必要があり、代表的な候補材であるバナジウム合金共通材料(NIFSHEAT)を製作し、大学と協力してその特性評価とコンポーネント開発に向けた試作研究などを進めています。これまでの実験で、高密度の析出を発生させて強度を高めることにより、時間によって変形が増大していくクリープ現象を抑制できることがわかりました。
微小試験用高温クリープ試験装置(パナジウム合金用に超真空雰囲気で800℃までの高温試験が可能)

●液体長寿命ブランケットの開発

 核融合原型炉では、「中性子遮蔽」、「発電のためのエネルギー取り出し」、「燃料増殖」の機能を担うブランケットの開発が必要です。溶融塩や液体金属を用いる先進的な液体増殖ブランケットでは、炉の運転期間やメンテナンスを考慮した材料の高温強度や腐食の制御が最重要課題です。溶融塩フリーベや液体金属リチウムの流動場での材料腐食現象を明らかにする必要があります。ブランケットに関する材料化学、流体力学、熱工学に関する統合型研究活動の一つとして、溶融塩強制循環型ループを用いた熱・物質輸送制御に関する研究を実施しています。
溶解塩強制ループ Oroshi2i-1

●高熱流プラズマ対向壁の研究

 定常核融合原型炉のダイバータでは最大10MW/m2の定常熱負荷を想定しており、超高熱負荷仕様のダイバータ開発が必要です。開発に必要な要素研究として特に、「材料の選定」、アーマータイルと冷却系間の「接合技術開発」、「3次元形状の設計検討」の3項目が挙げられます。熱負荷装置におけるダイバータ試作材への熱負荷試験と、コンピュータによる熱解析を相補的に実施することで、これら3項目の最適化に向けた研究を進めています。
熱負荷装置ACT
(ACTIVE Cooling Test-stand:最大ビーム出力100kW,加速ビーム電圧30kV,最大ビーム電流3.3A)によるダイバータモックアップの実環境試験

●第一壁の材料研究

 核融合炉の第一壁には、真空壁としてだけでなく、中性子による照射損傷に耐え、周辺プラズマとブランケット増殖材料を長時間高温で健全に隔離し、壁構造を保持できるような性能が要求されます。このような観点から、左の図に示したような実験室系装置を用いて、第一壁材料として有望な低放射化合金の高温でのプラズマとの相互作用および水素透過挙動に関する基礎研究を進めています。
プラズマ‐壁相互作用実験装置(左)
その中で照射下にある試験試料(上)

●トリチウム管理技術の研究

 核融合炉では、重水素とトリチウムが燃料として使用されます。トリチウムは放射性物質であり、安全に管理する必要があります。トリチウム管理技術として、トリチウム除染や、漏洩トリチウムの回収除去といった技術開発を進めています。また、放射線管理の観点から、微量トリチウム検出器開発も進めています。右の図は、名古屋大学の施設に設置したトリチウム検出システムです。これまでに、法令の排出規制値に相当する極微量のトリチウムでも回収できることを実証しました。
高感度トリチウム検出システム
(右):電気化学的水素ポンプによるトリチウム回収装置
(左):トリチウム検出器(名古屋大学との共同研究)
研究成果 > 核融合工学研究プロジェクト
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