3.1.2.4 理論・データ解析研究系

(1)はじめに

 この系の研究活動の主目的は、多次元の不均一・非対称性を持つプラズマに関する理論を開拓することによって、LHDを対象とする理論面での研究の推進をはかるζとであり、非平衡プラズマの物理を推進するとともに実験観測に物理的理解を提供し改善の方策を提案する事である。そうした研究を通じトロイダル・プラズマの総合的理解に資する事を目指している。

 複雑多岐な閉じ込めプラズマを描く理論には、その発展の段階に応じて多種の状況がある。一つは、(1)モデルに対する理論解析の方法が確立しそのモデルが妥当な応用例を持っており、具体的適用が求められる場合(たとえば複雑な磁場中の荷電粒子の運動)、次に(2)モデルの解法は確立しており、モデルが妥当であるような応用例を探すことが課題の場合(たとえば線型安定性や波動の励起)、さらには(3)モデルの構成と解法を模索することが研究である場合(乱流と輸送の問題など)、などに区分できよう。それぞれの研究発展段階に留意しつつ、理論・データ解析研究系では理論研究を展開しており、成果をあげてきている。

(2)研究成果

本研究系の成果のなかから代表的な例を紹介する。

  1. モデルと解法が確立している問題の例としてLHD内の高エネルギーイオンの運動があげられる。これらの知識は観測データ(大抵はごく限られた一部が得られる)から全貌を構成する手段を提供する。個々の荷電粒子の運動が独立と考えて重ね合わせで輸送現象を評価する新古典輸送理論や加熱の解析も積極的に展開している。新古典輸送理論は定式化の済んだ理論とする見方もあったが、H-mode現象では勾配長と粒子軌道の磁気面からのずれが同程度になる事の重要性が指摘されて以来、軌道のずれが大きい場合への拡張の課題が広く認識され、さらには粒子の減速時間と拡散時間が近付く状況も検討が必要とされる。これらの問題に解析・数値計算などの多方面から活発に取り組んでいる。そして実験でのNBI加熱分布を信頼性高く評価する事を可能にした。
    線型安定性の解析は集中的に進められて、モデルプラズマ分布に対し、β値とともにどのような摂動が不安定になるか示されている。巨視的な摂動については、モード数などの定性的な値の予言は実験により検証された。微視的な揺動はβ値限界や異常輸送に関連するが、その線型安定性解析もバルーニング・モードやイオン温度勾配モードや散逸型インターチェンジ・モードなどに進められている。磁気丘はこれらを不安定化するが、ヘリカルリップルが(強収束の原理のように)安定化に寄与する状況を見い出した。少数のモードのみが励起される場合、準線型理論は有効であるが、ビーム入射されたヘリカル系に起きるアルフベン周波数帯のバースト現象の解析も進められている。
  2. モデルの構成が課題である課題についても進歩が見られた。非対称系の磁気座標の二般的構成法が提示された。最もチャレンジングな問題は乱流とそれによる輸送現象であろう。この深遠な問題については保存則の見通しよい簡約方程式の提案や、電流拡散型乱流に例をとった亜臨界乱流の非線形理論電場構造による乱流抑制など、多くの側面から取り組んでいる。非線形輸送過程の結果、プラズマには種々の構造がうまれるが、特に径電場はヘリカル系に重要である。電場構造や異なる電場の領域が接する電場界面の存在やELMsやpulsationをモデル化するダイナミックスを予言している。それは閉じ込め改善の実験にも寄与している。電場界面の存在と乱流抑制理論からヘリカル系の輸送障壁を探す上での指導原理であることを提唱してきたが、それはCHSプラズマで検証された。LHDについても存在領域を検討した。
     これら種々の発展段階にある個々の理論要素を適宜とりいれて輸送現象や閉じ込めプラズマの諸状態を解析している。中心部の高温部のプラズマが示す構造形成の問題、長距離相関揺動による短時間応答、中心部や周辺プラズマでの輸送障壁の形成、外部ヘリカル摂動磁場による磁気アイランド形成、ダイバータ部の分布や輻射不安定性、そして固体水素のプラズマ中の溶発など、多彩な過程について解析を進め物理モデルを提案している。
     粒子の絶対捕獲や二次電流最小などの視点はヘリカル配位の最適手法として広く使われ、ここでも準対称(準等磁)配位の解析が進められているが、輸送理論や改善閉じ込めの理論の進展は、実際上重要な異常輸送の視点から今後新たな最適化原理を探すために貴重な基盤になるだろう。
  3. 異常輸送の研究は一般的な乱流状態の統計力学を拡張する端緒を得た。熱平衡に近い状態での非平衡統計力学はかなり確立した物理をなすが、遠非平衡系の物理学は将来の展開が求められている。閉じ込めプラズマの乱流輸送の研究成果は、プリゴジンの原理の拡張や遷移確率に関するアーレニウスの法則を拡張するなどの結果を得ており、一般物理の抽象的な理論としての価値も高い事を指摘しておきたい。
(3)今後の課題

 以上の例にあるように、この研究系の成果は、LHDを始めとする高温プラズマの理解に光をあて改善方策を提供してきた。そしてトロイダルプラズマの総合的理解に関する世界の研究水準をリードしていると自負している。その成果を踏まえ、共同研究成果を活かしつつ、今後とも多次元・非平衡プラズマの理論を強力に開拓していく必要がある。




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