3.1.2.5 装置技術研究系

(1)はじめに

 装置技術研究系は核融合装置の工学的開発と研究を担当する研究系である。具体的にはLHDが全超伝導マグネットで構成されることから、超伝導マグネット、同コイル電源、加熱機器用準定常電源と超伝導マグネットを温度4.4Kに冷却・維持する低温システムに関して機器・技術の開発研究を行っている。平成元年度から平成9年度までの期間は上記装置の要素開発を行うと共に、LHD本体の設計と建設に携わってきた。平成10年度から現在までの実験期においては円滑なプラズマ実験の推進のためにプラズマ実験全期間に参画すると共に、これら基本支援設備の信頼性高い運用技術確立を目指してLHDを用いた超伝導・低温技術のさらなる先進化研究を行っている。
さらにLHDの第二期計画段階ではプラズマ中心磁場強度を現在の3Tから4Tに増力することが前提となっている。それには超伝導ヘリカルコイル電流値の4/3倍増に対応してその冷凍温度を1.8Kに下げ、コイルの安定性限界を高める必要がある。このため超流動ヘリウム低温システムや高速励磁のためのコイル電源の開発など、本研究系は大型超伝導マグネットシステムとして先端的な多くの研究課題を解決するべき使命を持っている。

(2)研究成果

 装置技術研究系の研究成果のうち平成10年初頭までの内容は、既報告書「核融合科学研究所大型ヘリカル研究部外部評価報告書(1999年3月)3.1LHD装置技術成果」に詳しい。平成11年度末までの2ヶ年においては第1から第3の三サイクルのプラズマ実験を終了した。LHD装置試験で達成した成果の一例としてヘリカルコイル最内側ブロック(I-ブロック)の通電電流値の変遷を表3.1-1に示した。
導体の経験磁場が最も高いI-ブロックは同時に電磁力、変位共に最も過酷な環境に置かれる、現在までの当ブロックの最高達成電流値は11.45kAであり、これを過ぎると冷却環境の劣化を伴う広域の常伝導伝播の可能性が高まってくる。このため設計の13.0kAは未達成である。しかしながらプラズマ中心磁場を3Tに近づける試みとして、三つのコイルブロック(I、M、O)への電流を個別に制御して電流値を傾斜分布で与えることで、2.91Tまでを実現させている。これによって第3サイクル終盤では安定した2.89Tプラズマの連続実験を可能としている。
平成11年度は、低温実験棟に新たに冷凍能力5W/1.5K(または19W/1.8K)の超流動ヘリウム導体試験設備が完成した。研究系ではこの装置を用いて4T増力時に必要となる高温超伝導電流リードの開発を国内大学及びカールスルーエ研究所等と共同して行う予定である。本研究系の教官は技術部と共に装置技術グループを構成し、シフト体制を組んでLHDプラズマ実験に対する上記各支援装置の運用と維持を担当し、プラズマ実験の円滑な推進に責任を持っている。三つのサイクルで低温システムは3度の冷却・昇温を経過しヘリウム圧縮機は14、000時間の運転を記録した。2度のサイクル休止期間には、通常の保守工事に加えてヘリウムバッファシステムの増強、低温制御システムの2重化や雷による瞬停被害予防措置等の整備も行った。

(3)今後の課題

 第4サイクル以後での3Tへのさらなる高磁場化を目指して、本研究系はヘリカルコイルの冷却安定性向上を最重点課題と位置づける。そのため従来と同様にLHD実験を通じては常伝導発生の機構解明を進めると共に、低温実験棟の冷凍機設備を用いてのモデルコイルによる冷却安定性改善手段の開発研究を実施して行きたい。当面緊急に必要となるのは過冷却温度ヘリウム循環設備の製作であり、研究所の理解を得つつ総力を挙げて確実に進めたい。
4Tを目指したLHDの超流動ヘリウム化は現在のヘリカルコイルを前提とするため研究も超流動ヘリウム下での冷却安定性研究と超流動ヘリウム発生システムの開発研究に分けられる。いずれも低温実験棟における要素研究を前提と、して先進的研究の位置付けをして発展させていきたい。

 平成11年度は研究所に炉工学研究センターが発足し、本研究系の教官2名が推進母体として移籍し活動中である。今後この炉工学研究センターの構想は発展的に拡張されるであろうが、超伝導・低温工学も元々その一領域に位置付けられる。将来の組織改革等において本研究系が如何なる新しい使命を求められる場合でも、現在の本研究系が全体として上述の研究活動を維持・発展しながら、新しい学問分野へ展開・発展されることは研究所における工学基盤の確立という点からも望ましいことである。

実験年月日 電流値
(kA)
プラズマ中心磁場
(T)
中心半径
(m)
I,M,Oブロック
電流分布
磁場パターン
1999-7-21
1999-8-6
1999-9-9
1999-11-30
1999-12-15
11.33
11.40
11.27
11.07
11.41
2.72
2.85
2.90
2.91
2.74
3.75
3.6
3.5
3.6
3.75
均一
均一
均一
傾斜
均一
1-oモード
1-dモード
1-dモード
1-dモード
1-oモード
表3.1-1 第3サイクルでのヘリカルコイル電流(内側 I-ブロック)と中心磁場の推移



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