3.1.4 将来計画

 大型ヘリカル研究部は、研究所設立当初より6つの研究系組織の下でLHD計画を推進し、支援装置CHSや基礎実験・理論を推進してきた。約10年間のLHD建設期を経てLHD実験を開始し、平成12年夏には第4サイクル実験の開始が予定されている。この間、前節までに述べたように多くの研究成果が得られており、今後のさらなる実験成果の創出に国内外より期待が寄せられている。

 LHD実験の今後について述べる場合には、当面の実験計画と10年先まで見通した長期的な展望との二とおりの計画についての記述が必要とされる。

(1)当面のLHD計画(第一期)

 LHD実験は当面の目標であった3T近傍での強磁場運転が実現し、最大で2.912Tを達成し、第3サイクルでは2.9Tでの通常実験が可能となった。年間約1,000時間のマシンタイムが確保されている。

プラズマ実験における主要テーマは、

1)高性能プラズマの生成、制御
2)閉じ込めの改善(分布制御、周辺制御による)
3)高β化
4)定常プラズマ生成

の4つである。そのためには、当面世界の3大トカマク装置と比肩できる1MJを越えるプラズマエネルギーと数千万度のプラズマ温度が必要であり、加熱装置の増強とプラズマ真空容器内のダイバータを含む受熱系、冷却系の増強が計画されている。

 加熱装置としては、主な加熱装置はNBIであり、当面7MWから10MWを目標としてプラズマの温度と密度の改善を図る計画である。他の加熱装置はECHとICRFである。
ECHについては当面1MWを加熱の最大パワーとしているため、主加熱装置であるNBIとは明確にその役割が異なることになる。前者のECHは、現在、84GHz帯と168GHzのジャイロトロン数本を有してしており、NBIのターゲットプラズマ生成を受け持つ役割に加えて、電子温度に関する分布制御に果たす役割が非常に大きくなる見通しである。
ICRFについては、そのLHDへの適用の有効性が証明され将来の近未来の大型化に備えて準備が開始されている。ICRF加熱がコストパフォーマンスの良い事が期待を集めており、大加熱定常化実験の足がかりとなるデータベースの蓄積が進んだことの意義は大きい。当面、ループアンテナ3セットと導波管型アンテナ1台の二とおりの実験ツールが確保される見通しである。

 計測装置についても、第2サイクルまでに、非常に良い立ち上がりを見せている。空間130点で50Hzの繰り返しで電子温度・密度分布が可能なレーザートムソン散乱装置、空間12コードの密度分布計測を実現しているFIR干渉計等の大型の測定器をはじめ、数々の装置でのデータの蓄積と解析が進んでいる。今後も精度と信頼性の向上に努め、その蓄積が急速に進む目通しがついている。蓄積されたデータについては、そのデータベースとしての共通化、共有化を進めている。特に共同研究者にとっての活躍の場でもあり、多方面の新しい具体的企画を用意する計画である。国際的な評価に耐えられるだけのデータベースの蓄積が進んでおり、これらのデータは、順を追って公開されて行く予定である。

(2)長期的なLHD実験計画

 LHD実験計画は、当初、初期3年間の第一期実験に対し7年間の第二期実験計画から構成されていた。都合10年間の実験計画とされていたわけであるが、現状概算要求に基づく施設整備費はこの第一期実験の実行に必要な経費のみが認められている段階である。また、運転経費も当初の計画に比べて完全に認められているわけではないため、今後長期的なビジョンに基づいたLHD実験計画の拡充実現への努力が一層強く求められることになる。
ただし、一方では、厳しい財政状況下にある現状に照らして、LHD実験計画は多少の遅れを覚悟しなければならない状況も理解しなければならない。LHDの実験体制はフレキシブルな対応を求められている。第二期実験計画は、第一期(1)項での種々の実験成果に基づき、その学問的な評価を済ませた後、新たな計画として構築される必要があるが、その計画の骨子は以下の通りである。

1)磁場の増強、4T化によるプラズマ制御特性の改善
2)加熱出力の倍増によるより高性能プラズマの生成
3)重水素実験によるプラズマ性能の更なる改善
4)長時間放電の実現と定常無電流プラズマ物理の開発

1)項の磁場増強のためには、ヘリカルコイルの超流動冷却を実現する必要があり、これは、超伝導工学にとってのきわめて斬新かつ挑戦的なテーマの創製を意味している。液体ヘリウム冷却系の能力の倍増が求められており、現状の窒素シールドに加え、4.4Kでのサーマルアンカー等の設置が技術的に必要となる。世界的に見渡してもLHDクラスの大型構造物を超流動ヘリウム温度まで冷やした前例はなく導体の安定性の改善と冷却特性に関わる超伝導工学に新たなマイルストーンを築く研究事業となる。

2)項の主加熱装置の増強に当たっては、第一期の実験結果と実績を踏まえて加熱手段とその将来への発展性を慎重に判断する必要がある。NBIの場合、更なるピームラインの設置により出力の倍増が可能である。ICRFについては、NBIに次ぐ加熱手段としての位置付けが確立しつつある。これに加えて、ECHを補助的な加熱李段として用いて相乗的な効果を発揮させることができる見通しである。
入カパワーの増大にともないダイバータ等の真空容器表面での冷却手段の拡充が求められており、より核融合炉条件に近づいた領域での総合的な試験が実施可能となることに意義がある。

3)項の重水素の使用は、過去の実験データにみられるとおりの同位体効果による閉じ込めの改善とメカニズムの解明を目指しての実験計画である。重水素プラズマヘの重水素ビームの入射によりD-D反応が起こり中性子とトリチウムの発生が見込まれている。
中性子の発生量は、最大2.1×1020個/年、トリチウムの発生量は、最大10Ci/年でありD-T核融合炉の条件に比べればはるかに少ないレベルであるが、環境への影響、放射化等の点で慎重な検討が必要とされている。真空容器の低放射化材料への変更、中性子シールドの追加等かなりの技術的対応が必要な課題である。
放射線障害防止法に基づく科学技術庁の認可、地元の了解の取り付け等課題が多く残されている。この同位体効果については第一期の実験においても重水素以外のプラズマによる実験が予定されており予備的なデータベースが得られる見通しである。さらに進んでは、重永素の代わりに4Hをまたは3Heを用いる実験の検討も進められている。検討の時間は充分にあるため、今後の適切な判断と妥当かつ慎重・現実的な対応が可能であると考えている。

4)項の長時間放電は、無電流定常プラズマの実現として大変意味のあるテーマである。時定数に関わる諸定数の検討の結果、1,000秒程度が最低必要と考えられており、また加熱出力についても充分意味のあるレベルとして10MWまでの実験を予定している。ヘリカル型の能力を示す象徴的な実験との位置づけもあるが、技術的な困難も大きく、従って大変チャレンジングな実験テーマとなる見通しである。加熱手段は、NBI、ECH、ICRFとも対応が充分に可能であり、それぞれの特長を生かして核融合炉へ直接つながる技術の開発が可能となるであろう。

 一方、支援装置としてのCHSは、平成11年度に土岐サイトヘの移転が完了し、ECH、NBIによる加熱実験を最近再開したところである。実験はLHDと相補的に行う計画であり、ポテンシャルの分岐物理現象などを詳細に調べる予定である。CHSは実験開始からまもなく丸12年を経過し(現在8万ショット)、装置としての寿命に近いため、後継装置の検討を5年前から精力的に行ってきている。広くヘリカルプラズマの物理を解明するために、モジュラーコイルを用いた低アスペクト比と低平行粘性を特徴に持つ準軸対称ヘリカル配位を検討しているが、その建設には2年はかかることを考えると、サテライト装置実験の円滑な移行のため、早期の着手が望まれている。

 現在の大型ヘリカル研究部の組織はLHD建設を強く意識して設定されたものであり、現在の実験遂行目的に対応しきれていない面もある。一方、今後のLHDの増力には建設時の維持発展も必要である。実験体制に求められる最大のポイントは研究の進展に合わせた組織の柔軟性である。そのため、6つの研究系を横断する形で実験グループと装置技術グループが構成され、円滑な実験を行う努力がなされてきている。今後の拡大される実験の遂行のためには、より最適化された組織への変更、強化が必要と考えられる。

 この組織の最適化は、

(a)LHD実験や支援実験、理論の研究成果を高め、
(b)共同研究の更なる推進

をはかることで核融合の学理究明を遂行するために必要であるが、同時に、

(1)省庁統合による今後の核融合研究体制の変化の対応
(2)大学や大学共同利用機関の独立行政法人化への対応
(3)大型核融合装置の将来計画立案への対応

等のためにも是非とも必要であり、慎重な検討を始めることが必要である。




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