1 はじめに

 大型ヘリカル装置(LHD)計画は、昭和61年の学術審議会報告「大学における今後の核融合研究について」に基づき、文部省大学共同利用機関である核融合科学研究所において推進されているヘリカル型環状磁場装置による核融合プラズマ実験研究である。
LHDは、8年問の建設期間を経て、平成10年3月31日にファーストプラズマの点火に成功し、その後引き続き平成10年5月13日まで第1サイクルのプラズマ実験が行われた。第1サイクルのプラズマは、84GHzと82.6GHzのジャイロトロンを用いた第2高調波による電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH〉によって生成された。第2サイクル・プラズマ実験は、平成10年9月16日にECHプラズマを生成するところから開始され、中性粒子ビーム入射(NBI)による加熱実験、イオンサイクロトロン共鳴周波数(ICRF)による加熱実験等を行い、平成10年12月18日に終了している。加熱装置の調整・整備は主に各実験サイクル間の保守点検期間に進められ、平成11年7月3日から平成11年12月14日までに行われた第3サイクル・プラズマ実験では、最終的に表2.1に示したような加熱条件が達成されている。
NBIによる最大入カパワーは4.2MWで、典型的な加速電圧は155keVに達'している。また、ICRFとECHでもMW級の最大入カパワーを実現している。第1及び第2サイクルのプラズマ実験は従来の計画どおり1.5Tで行われたが、第2サイクル終了前の数日間は試験的に2Tを超える領域で行われた。第3サイクルは、主に磁気軸位置Rax=3.6mで2.75Tの磁場を用いてプラズマ実験が行われた。第3サイクルの終了前には、Rax=3.6mで2.9Tとこれまでで最も高い磁場でプラズマ実験を行うことに成功している。

 システムのインテグレーションを求められる核融合研究に於いては、その必要条件として本体装置、加熱装置、計測器等についての技術開発が合わせて進展しており大きな成果が挙がっている。これら、建設期の装置工学に関わる研究開発体制は、現在も装置技術グループとして継続されており、実験の円滑なる実行と今後の増力計画に対応できる体制を維持されていることの意義は大きい。今後本格化するLHD実験計画は、これらの技術的な基盤の上に構築されており、プラズマ実験の進捗に応じて、超伝導、高熱流束制御、電源・制御、材料、加熱技術、計測技術等の分野において更なる発展が期待されているところである。

 一方、理論研究分野においてもLHD実験計画の進捗に歩調を合わせてその進展にめざましいものが有る。この分野の研究は、LHDに関連するプラズマの平衡、安定性、閉じ込め等にかかわる諸物理現象に焦点が合わされており、建設期には理論的予測において、そして実験開始後はデータの解析において多くの成果を挙げることができた。加えて、理論物理学としての体系化を目指しての研究が進められ、遠非平衡系の物理、電場等による構造の形成・分岐等の物理の根幹にかかわる多くの研究課題において成果が得られている。

 プラズマ実験は、開始されて以降、第1、2、3サイクルの実験により、プラズマ性能は、目ざましく改善されている。これら達成値をまとめると以下のとおりである。

 かようにプラズマエネルギーの急速な進展結果を出すことができたその主たる理由として、LHD実験においては無電流プラズマ生成が中心のため電流ディスラプションの不安が全く無いことが大きく寄与していることはまちがいない。
LHDのエネルギー閉じ込め時間が従来の中型ヘリカル装置から得られた経験則よりも良いことが第2サイクル・プラズマ実験で既に明らかにされていたが、第2サイクル終盤に磁気軸を内側へ寄せる(Rax=3.6m)ことにより、閉じ込めがさらに改善される手がかりがつかめた。第3サイクルではこの磁場配位に焦点を当て、その閉じ込め特性の種々のプラズマパラメータ依存性を広範に調べた。
ヘリカル系の経験則であるISS95と比較して、LHDの特に内寄せのデータは1.6倍程度の改善を示し、国際熱核融合実験炉(ITER)設計に公式採用されているトカマクHモードのデータと比較して遜色ないことが示されている。今後より高い加熱パワーでの高温高密度プラズマにおいて同様の性能を示すことが求められる。

 この様に、LHD実験は必要な成果を上げつつ進展している。幸いにも、超伝導工学を頂点とするLHD装置システムの工学インテグレーションとプラズマ物理学の総力を挙げての実験研究が建設期と実験開始期を通して非常にうまく機能し始めており、大学共同利用機関として、拡大された研究の場を提供できる見通しが立ったと言える。今後は、この大きな流れを維持しビッグサイエンスとしての核融合プラズマ研究の発展にいかに寄与できるかにかかってきていると考えている。

 以下の各章では、これらLHDの実験成果、これを支えるLHD装置技術研究の成果、そしてLHDの実験データの解析を含む広範な理論研究の成果、及びLHD支援研究としてのCHS実験の成果について具体的な内容を報告するものである。




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