2.7 エネルギー閉じ込め時間

 エネルギー閉じ込め時間については特に、無次元量に対する依存性に注目して研究を進めている。特に、β値や衝突頻度については炉条件に近いパラメータが得られているが、規格化ジャイロ半径についてはさらに1桁の向上が必要であるので、このパラメータに対する依存性を明らかにすることが重要である。また、規格化ジャイロ半径に対する依存性は輸送を支配する不安定性の特性長と関係し、プラズマ物理の観点からも重要な課題である。これらの点から大きなサイズを持ち、第3サイクルから高磁場の実験が可能となったLHDの役割が大きい。

 LHDのエネルギー閉じ込め時間が従来の中型ヘリカル装置から得られた経験則よりも良いことが第2サイクル・プラズマ実験で既に明らかにされていた。第2サイクル終盤に磁気軸を内側へ寄せる(Rax=3.6m)ことにより、閉じ込めがさらに改善される手がかりがつかめた。第3サイクルではこの磁場配位に焦点を当て、その閉じ込め特性の種々のプラズマパラメータ依存性を広範に調べた。図2-7は第2サイクルで調べられたRax=3.75mの場合と第3サイクルでのRax=3.75mおよび3.6mでの場合についてエネルギー閉じ込め時間の国際ステラレータスケーリング95(ISS95)からの改善度をデータの分散で示したものである。
これにより、Rax=3.75mの場合については真空容器内環境およびダイバータ条件の変化があったが、再現性よいデータが得られていることと、Rax=3.6mの配位は1.6倍程度の改善を示すことが分かる。図2-8にはこれまで得られたデータを、国際熱核融合実験炉(ITER)設計に公式採用されているトカマクHモードのデータと合わせて、ISS95と比較する。LHDの特に内寄せのデータは大型トカマクの結果と遜色ないことが示されている。今後より高い加熱パワーでの高温高密度プラズマにおいて同様の性能を示すことが求められる。

図2-7 エネルギー閉じ込め時間改善度の実験で得られた分散
図2-8 エネルギー閉じ込め時間の実験値とISS95からの予測値の比較。
トカマクについてはITER H-mode Database3、 Ver5から引用

 LHDの閉じ込め特性を議論する上で従来の中型装置と異なる際立った特長として周辺部の圧力勾配が大きくなる、いわゆるペデスタルの形成がある。規格化小半径ρで0.9の周辺で圧力勾配に不連続性があるように見える。これは周辺部とコア部の輸送機構が異なることを示唆している。LHDの閉じ込め領域をρ=0.9より外側のペデスタル部と内側のコア部に分けてRax=3.75mの配位でのエネルギー閉じ込め時間を議論すると、コア部については従来の中型装置のデータと合わせてジャイロボームに似た次元拘束条件を満たす経験則が得られる。逆にペデスタル部の寄与が中型装置では10%以下であることに対し、LHDでは40-60%となり、これが閉じ込め時間の改善の内容であることが明らかとなった。
一方、さらに閉じ込めのよいRax=3.6mの条件では、このような分析でも理解できる結果が得られず、特にコア部を含めた閉じ込め改善があることが示唆されている。1次元熱輸送解析においても、CHS装置で得られた各種無次元量が等価な放電を比較することにより、コア部の熱輸送係数が規格化ジャイロ半径に比例するジャイロボームの描像と矛盾しない結果が得られている。周辺部についてはLHDの輸送係数の改善がCHSより際立って大きく、ジャイロボームよりもより強い依存性を示す。

 ジャイロボームの性質はグローバルには密度依存性を持つか否かに顕著に現れる。図2-9に磁場条件、吸収加熱パワーを揃えた放電について、エネルギ』閉じ込め時間の密度依存性を示す。トカマクにおいては高速イオンの閉じ込めの分離について議論の余地があるが、加熱入力密度に関連して閉じ込め時間がある密度で飽和することが観測されている。このモデルからの予測値から2.5倍高い密度までLHDでは閉じ込め時間の飽和は見られていない。

 この閉じ込めの改善はコア部とペデスタル部に分けて見ると、ペデスタル部は低密度から高密度までほぼ一定であることに対し、コア部が改善されていることが分かった。この性質からMHD不安定性と関連して以下の仮説が導かれる。ヘリオトロン配位ではプラズマ周辺部は磁気丘であるため抵抗性交換型不安定性が駆動されることが理論的に予測されている。このため、ペデスタル部での圧力勾配が規定されているのではないかということである。
この仮説について、第3サイクルでは磁場揺動との関連から詳細に解析が進んでいる。

図2-9 エネルギー閉じ込め時間の密度依存性。加熱入カパワーは1.8MW前後。
矢印はトカマクでのモデルから予測される閉じ込め時間の飽和が
発現する密度。



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