2.9 周辺輸送障壁

 LHD実験の重要な課題の一つは、周辺制御による閉じ込め改善である。高効率の排気により周辺温度を数keVに上昇させることで閉じ込め改善を目指す高温ダイバータ運転がLHD設計段階で提案され、ダイバータ排気装置等の開発が銑意行われている。第2〜3サイクルのLHD実験では、アクティブな排気なしでも、トカマクのHモードと同じような急峻な温度勾配を持つペデスタルが温度分布に存在していることが観測された。
図2-11(a)、(b)には、プラズマ条件・パラメータ(磁場、密度、β値)のかなり違った2種類の放電の電子温度分布を示しているが両者の分布の形状は、似通っている。それらの分布は、中心部の勾配の緩やかな直線と周辺の勾配の大きい直線で表されるモデル分布(図2-n(c))に近い。ペデスタルの幅(△)は、磁気面平場で〜6cmで同規模のトカマクにおけるHモード放電の幅よりかなり広い。
この領域での熱輸送係数(nχ)は、1.0-2.0×1019m-3と低く熱輸送障壁と呼ぶことができる。図2-1(c)の破線で示されているような、中心部の温度勾配が同じであるがペデスタルのない分布を有した仮想放電と比較するとプラズマ蓄積エネルギーおよびエネルギー閉じ込め時間が2-3倍大きいことになる。中心電子温度とペデスタル温度の密度依存性を図2-12(a)に示した。ペデスタル温度(Teped)は、密度増加に伴って、緩やかに減少し、密度が3×1019m-3以下の時は、1keV以上である。
加熱入力の依存性は、図2-12(b)に示されているがTepedの上昇は、3MWで飽和する傾向があり、今後の実験の重要な課題となっている。Tepedは、また磁場にほぼ比例している(図2-12(c))。LHDの場合、Tepedは、最高で1.3keVまで観測され、相対的にも中心温度(Te(0))の40%にも達して、同規模のトカマクに比べてかなり高い。図2-12から温度比(Teped/Te(0))は、密度、加熱入力、磁場の値の変化にかかわらず0.34〜0.43の範囲にあり、温度分布は大きく変化しない。
この温度分布の不変性は、温度が急速に変化する時にも維持されている。例えば定常状態の放電に多量のネオンガスを導入すると放射崩壊を誘起するが、ネオン放射冷却は周辺に局在しているにもかかわらず温度分布の形状をほぼ維持しながら温度が急速に下がる。

 LHDペデスタルの特徴をまとめると(i)その生成は、何らかの遷移後に急激に発生するのではなく、最外殻磁気面に十分な熱流が横切る限り存在する、(ii)粒子(不純物を含め)閉じ込めの増大が伴わない、それゆえに長時間放電が容易になっている、(iii)β値が2%以上になってもLHDでは、ELMのようなMHDの活動は観測されていない。トカマクHモード放電では、一般的にはある時間間隔でELMが発生して、周辺部の粒子、エネルギーが繰り返しはき出される。これらのLHDペデスタルの特長は、将来の装置、炉を想定した場合、極めて好都合である。

図2-11 (a)高蓄積プラズマエネルギー放電の電子温度分布(Wp=700kJ、 n=6.3×1019m-3、 Bt=2.75T)
(b)高べータ放電の電子温度分布(<β>=1.3%、 n=2.3x1019m-3、Bt=0.75T)
(c)モデル温度分布

 ペデスタルの形成機構にエルゴディック領域を含めたLHDダイバータ配位が直接影響を与えているかを調べるためにリミター(カーボン板)をρ=0.8まで挿入した。
ペデスタル(温度勾配の急峻周辺領域)は、消滅するのではなく、リミターの位置に応じて内側に移動し、それゆえにダイバータ配位の直接の影響が小さいことがわかった。ペデスタルの急峻な勾配の領域は、最外殻のすぐ内側にあるが、これまで実験に使った配位(リミター配位を含め)での(ι/2π)=1面は、周辺(0.85<ρ<1.0)に存在しているので(ι/2π)=1面の周りとも解釈できる(CHSやW7-ASでは、最外殻のι/2πが0.5、 1.0の時、Hモードが発生している)。
また、ある特異なケースとしてNBI加熱によるプラズマの拡大時に、高T、勾配領域が内部(ρ=0.75)に現れたがこの位置は、(ι/2π)=1面(ρ=0.85)のすぐ内側であった。それ故に(ι/2π)=1の有理面、またはエラー磁場により発生しているアイランド(m/n=1/1)がペデスタルの形成に何らかの役割になっている可能性がある。

 アクティブな閉じ込め改善の方法として周辺部をLIDで制御(強力粒子排気)する計画(第5サイクル)になっているが、その予備実験の一貫として、また周辺閉じ込め機構の理解を深めるために外部摂動磁場によりアイランド(m/n=1/1)を発生させ、プラズマヘの影響を調べた。局所リミター実験では、不純物による放射パワーが増加してプラズマが崩壌する現象がLIDコイルによる磁場を加えることにより抑えられ、放電が最後まで持続することが見出された。
これはLID磁場配位が周辺部への不純物の流入を防ぐ働きをしていることによるものと考えられる。アイランドに関連して興味ある現象として、プラズマによるアイランド幅の抑制がある。電子ビームMapping測定によるとLHD真空磁場配位では、何らかの原因(現在調査中)でm/n=1/1のアイランド(8cm)が存在している。
このアイランドは、当然ながらLIDコイルによって小さくできるがプラズマによっても小さくなることが観測された。密度の高い放電中では、電子温度分布にアイランドによる分布の平坦化がはっきり観測されるが、低密度、高温プラズマではアイランドが小さくなり、温度分布にはその存在が明瞭でなくなる。
LHDのようなdι/dr>0の回転変換分布配位では、ブートストラップ電流分布がアイランドで変化変形を受けて、アイランド自身を小さくする磁場を発生させて、その幅が抑制されることが理論的に予想されているが、観測された幅の抑制がこの機構によるものかは、現在詳しく検討している。




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