3.5 ヘリカルコイルの励磁特性

 平成10年度には2回の冷却を行い、第1サイクルでは計画通りに1.5Tまでの励磁を行って超伝導コイルシステムの健全性を確認した。約4ヵ月の1.5Tプラズマ実験を経験してから第2サイクル途中の10月に標準(#1-oモード、磁気軸が装置中心より3.75m)3.0Tまでの励磁を試みたが、その途中の2.75Tにおいてヘリカルコイルに広域の常伝導伝播が発生して緊急減磁インターロックが働いた。この保護動作は正常に動作して超伝導コイル、コイル電源システムおよび低温システムの健全性は保たれたので、その後も1.5Tプラズマ実験を継続する合間に1/5〜1/10の励磁遠度での高磁場励磁を繰り返して、12月には標準2.75Tまでの再励磁と内寄せ(#1-dモード、磁気軸が3.6m)2.85Tの励磁に成功した。
平成11年6月から3回目の冷却を行い、この第3サイクルでは主に内寄せ2.75Tでのプラズマ実験が行われ、その合間に高磁場励磁試験を行った。電流中心を変化させるプラズマ実験のためにヘリカルコイルはプラズマに近い順にI, M, 0の3ブロックに内部が分割されている。負荷率の高いIブロックの電流値を減らしてM, Oブロックの電流値を増やす(電流グレーディング)方法によって、図3-4に示すように内寄せ2.91Tまでの励磁に成功した。

図3-4 ヘリカルコイルの負荷曲線と第3サイクルまでの到達値

 第2サイクルと第3サイクルに行われた主な励磁試験を表3-2に示す。第3サイクルまでの励磁試験においてヘリカルコイルに観測された特徴は次の通りであった。

(1) 未経験領域の励磁ではコイル両端に10mVを超えるスパイク電圧が頻繁に発生するが、図3-5に示すように2回目以降の励磁では発生頻度と電圧レベルが低減する。
2回目以降は、励磁時には2.2丁付近よりも高磁場側で、減磁時には2.1〜0.9Tの領域で再現性良くスパイク電圧が発生することから繰り返して滑る箇所が存在すると考えられる。また電圧レベルの比較から数mVを超えるスパイク電圧は全てIブロックが発生源であると考えられる。
(2) 第3サイクルの最初の励磁において、バランス電圧が第2サイクル後半に得られた波形よりも電圧レベルと頻度の両方が大きくなる現象が観測された。昇温によってコイルのトレーニング効果の大半が失われる結果となっている。
(3) 高磁場から2T付近まで下げる際にはバランス電圧が発生せず、その途中で再び同じ磁場に上げる際にもバランス電圧がほとんど発生しない。この間は静止摩擦力によって導体等の滑りが発生していない(弾性的な変位のみ)と推測される。
(4) 第2サイクルでは最初の標準2.75T励磁で広域の常伝導伝播が観測されたが、それ以後の同一電流値までの低速励磁では常伝導の発生は観測されなかった。しかし、第3サイクル最初の励磁は低速であったにも拘わらず標準2.72Tにおいて常伝導発生が観測された。低速励磁は冷却状態の改善効果等が期待されるが、常伝導発生の抑制には大きな効果は期待できない結果となっている。
(5) 電流グレーデイングによって内寄せ2.91Tまでの励磁に成功したが、この場合には平均電流値が経験値を超えた時点からバランス電圧は1回目の波形を示し、2.91Tを超えたところで互ブロックに常伝導の発生と回復が観測された。

表3-2 第2サイクルと第3サイクルの主な励磁試験

年月日 プラズマ中心磁場(モード、磁気軸半径)
1998年10月20日
1998年10月21日
1998年12月1日
1998年12月3日
1998年12月10日
1998年12月16日l
1998年12月17日
1998年12月18日
1999年7月21日
1999年7月22日
1999年8月6日
1999年9月9日
1999年11月30日
1999年12月15日
2.50T(#1-o, 3.75m)(0.1T/min)
2,75T(#1-o, 3.75m)から緊急減磁
2.20T(#1-o, 3.75m)
2.55T(#1-o, 3.75m)
2.70T(#1-o, 3.75m)
2.70T(#1-b, 3.75m), 2.50T(#1-b, c, d, o)
2.74T(#1-o, 3.75m), 2.85T(#1-d, 3.6m)
2.75T(#1-o, 3.75m)
2.72T(#1-o, 3.75m)で常伝導伝播と回復
2.80T(#1-d, 3.6m)
2,85T(#1-d, 3.6m)
2.90T(#1-d, 3.5m)
2.91T(#1-d, 3.6m)で常伝導伝播と回復
2.74T(#1-o, 3.75m), 2.91T(#1-d, 3.6m)で常伝導伝播と回復

図3-5 ヘリカルコイルの繰り返し励磁によるバランス電圧強度の変化



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