3.6 ヘリカルコイルの冷却安定性

 プラズマと真空容器間の必要な空間距離を確保するために、ヘリカルコイルには40A/mm2の電流密度が要求されている。このコイルは作業性の制約から巻線時に電磁力に相当する引張力を加えることが困難と考えられたので、冷却安定性の高い導体の開発を進めてきた。
開発段階では直状の導体サンプルに大型スプリットコイルで外部磁場を加え、ヒータによって高磁場領域に常伝導部分を発生させてから電流を滅少させて超伝導に回復する電流値を測定した。さらに外部磁場分布の影響を解析的に評価し、この測定値を補正して最小伝播電流を求め、冷却端安定条件を満足するように導体露出率を最適化した。しかしながら、その後の動的な安定性解析によって、高純度アルミニウム安定化材に電流が拡散する間(〜0.1s)の高い発熱密度によって更に低い電流で常伝導伝播が生じうることが指摘され、外部磁場分布の影響を実験で確認する目的も兼ねて、実機コイル1層目を模擬した10ターンの円形試験コイルを製作して通電試験を行った。
その結果は図3-6に示すように短尺導体試験結果から推定された低温端回復電流よりも低い測定値が得られた。容器に囲われているために常伝導の発生によって冷却状態が悪化することが主な原因であると考えられる。また、磁場の低い2層目まで伝播した後に速やかに回復する電流値が6.5T付近では10.5kAとなる結果が得られた。この値を用いて常伝導伝播が起こり得る電流値の磁場依存性を計算すると、実機のヘリカルコイルで観測された常伝導発生点はこの曲線上に重なることが分かっている。

図3-6 円形試験コイルの低温端回復電流と常伝導伝播が起こり得る電流I(m.p.)

 実機コイルの常伝導発生の検出には2つのコイルの差電圧(バランス電圧)をモニターする方法を採用し、I, M, 0各ブロックに個別の検出器を設けている。外部ノイズによる誤動作を避けるために判定条件を「0.2V以上が3s以上継続」に設定している。実機コイルで最初に観測された常伝導の発生は標準2.70T直前であり、図3-7に示すように約2m長さの伝播の後に回復した。ヘリカルコイル導体は超伝導線とアルミニウム安定化材の幾何中心位置が異なるために常伝導伝播に伴って誘導電圧が生じるが、隣のブロックのバランス電圧との差を取ることによって抵抗成分を分離することができる。
第3サイクルで合計3回観測された常伝導伝播と回復も類似の波形を示しており、有隈長の伝播の後に0.5s程度の時定数で回復する。アルミニウム安定化材に電流が拡散する時定数に比べて数倍の伝播時間があることから、伝播が止まる原因にはヘリカルコイル1ピッチ間の磁場分布や冷却条件の変化が関与していることも考えられ、現在も研究が進められている。広域の常伝導伝播が発生した最初の2.75T励磁では、図3-8に示すようにH1-Iブロックに常伝導部が約20m伝播してから緩やかに回復する途中で一気に拡大伝播して緊急滅磁動作に入った。この時のコイル容器の温度は図3-9の様にトーラス方向に不均一となったことから、常伝導発生の起点はH1-Iブロックの口出し部近傍であり、局所的な冷媒温度の上昇によるコイル断面方向の常伝導伝播を伴ったことが急速な拡大伝播の原因であると考えられる。
ヘリカルコイル内で発生した泡は浮力で上昇してコイルの最上部からヘッダータンクに抜ける構造になっており、常伝導伝播に伴うジュール損失によって発生した多量のヘリウム泡はコイル内部に蓄積して冷却状態を悪化させる。このことから有限長の常伝導伝播が生じた場合に回復できるか否かは時闇も重要な因子になっている。

 ヘリカルコイル3ブロックの最大経験磁場が異なることから、磁場の高いIブロックの電流値を下げてその分をM, Oブロックで負担するような電流グレーディングによって冷却安定化された範囲内での高磁場励磁が期待できる。この手法によって1999年11月に#1-d 2.91Tまでの励磁を達成した。現状ではM,Oブロックには励磁に伴うスパイク電圧の発生が観測されないことから、電流値グレーディングを更に大きくした高磁場励磁の可能性も期待される。また、導体の冷却安定性を向上させるために冷却温度を低下させる改造についても検討が進められている。

図3-7 最初の標準2.70T励磁で観測された常伝導伝播と回復
図3-8 標準2.75T励磁で生じた広域の常伝導伝播と緊急滅磁
図3.9 標準2.75Tから緊急滅磁時の外赤道位置のコイル容器底の温度変化
#1〜9は北から時計回りに10分割された方位を意味する。奇数はH1コイル容器で偶数がH2コイル容器の温度であり、H2コイル容器の5点の温度差は1K以下である。



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