4.2 プラズマ物理理論の研究

 LHD研究部ではこの研究所の研究理念のひとつである、理論・シミュレーション研究にたいしても大きな寄与をもたらした。それらについてここで簡明に述べる。

4.2.1 プラズマの特性と求められるプラズマ物理

 宇宙に存在することが知られている物質の大半はプラズマ状態にあり、プラズマの物性の理解が私たちをつつむ宇宙そのものの理解を進めるうえの鍵を握ることは、今世紀の物理学の最前線の常識である。

 プラズマ自体は多種多様であって具体的対象を見れば宇宙に満ちる銀河間距離を超える超巨大をものから核融合を目指した超高温閉じ込めプラズマ・憤性閉じ込めの高密度プラズマなど、一口では述べられないものであるが、物理学へのインパクトという観点からそれらを貫く性質を大胆にまとめてみよう。特徴的な性質は、

強い不均一性と輸送係数の非線形性、
強い乱流の発達や高エネルギー粒子の選択的加速などに代表される非エネルギー等分配状態の絶えまざる維持、
荷電粒子群の電磁場との強い相互作用を通じた構造形成、(自発的秩序パラメーターの発生)、
トポロジーや形の変化に伴うエネルギー解放、
熱平衡にあったとしても加算性が無い

などというような、従来確立されてきた統計力学では取り扱えない特徴の例が数えられる。

 これらの特徴こそがプラズマのプラズマらしい興味深い性質を代表しているので、プラズマ物理学を推進することは現代物理の未踏の方法を開拓する事そのものである。

 たとえば、熱平衡に近い系の統計力学としては、揺動散逸定理や最小エントロピー生成原理などが定式化されており、幅広い応用範囲を示してきた。それに対し、上に述べたようなプラズマの性質は熱平衡に近い系としての性質から懸け離れており、通常の統計力学原理が適用できない。そうした観点から、統計力学原理の非平衡プラズマヘの拡張の努力はがねてから進められてきた。
たとえば、プラズマのドリフト波乱流に対し、最小エントロピー生成原理ではなくエントロピー生成の極値(極大)で記述できるのではないかという仮説のもとで理論が議論され(J. Phys. Soc. Jpn. (1982),S. -I.Itoh) さらには強い乱流に対する自己維持乱流理論を用い非線系インターチェンジ乱流では乱流状態の発達でエントロピー生成が極大を持つことも示された(K. Itoh, et al. (1996))。しかし、こうした議論では、エントロピー生成量を定義するにあたっては、ギッブス・デュエムの関係を陰に使っている。しかし、そもそも不均一プラズマのような遠非平衡系ではギッブス・デュエムの関係が成り立つか否か不明である。遠非平衡系ではそれに相応しい統計力学の開拓こそが急務である。




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