1 概要

1.1 はじめに

核融合科学研究所は平成元年に創設されて以来、

を中心に研究活動を推進してきた。また、大学共同利用機関として、共同研究、国際協力、大学院教育を積極的に推進し、国内外のセンターオブエクセレンス(COE)としての役割を果たす努力を続けてきた。
 平成9年6月には新サイト(土岐市)への移転を完了し、また、平成2年度から進めてきたLHD建設も平成9年12月に装置本体の組立が完了した。その後、ベルジャー、真空容器の真空排気、超伝導コイルの冷却と通電のステップを順調にたどって、平成10年3月31日にプラズマの最初の点火試験に成功した。3月31日から5月中旬までの第1実験サイクル、9月から12月中旬までの第2実験サイクルにて、当初の目標以上の研究成果を得て終了した。現在、平成11年6月からの第3実験サイクルに向けて新たな機器の設置など準備を進めている。LHD計画の概要と過去10年間に上げた研究成果の主なものは次のとおりである。

1.2 大型ヘリカル装置計画の概要

 大型ヘリカル装置計画は昭和61年の学術審議会答申に基づき設計部会による概念設計、組織検討部会による推進母体となる新研究所の検討を経て、平成元年、核融合科学研究所創設、計画がスタートした。
 大型ヘリカル装置(LHD)計画では、わが国独自の開発の歴史を持つヘリオトロン磁場を用いて世界最大の超伝導ヘリカル装置を建設し、定常運転核融合プラズマの閉じ込め方式の研究を行い、ヘリカル方式の炉心プラズマのための重要な物理的、工学的研究課題を解明することを目的としている。

1)重点研究課題
 ヘリカル型方式は閉じ込め磁場を外部コイルで形成するもので、他に比べ定常運転に優れた方式と言われており、大型ヘリカル装置実験によって、以下のような重点研究課題を研究、開発することで核融合プラズマの閉じ込めが可能であることを実証しようとするものである。
(1)高温・高密度・長時間プラズマを発生し、炉心プラズマに外挿し得る輸送の研究を広範に行う。
(2)炉心プラズマに必要な平均べータ値5%以上の高いべータプラズマを実現し、関連する物理を調べる。
(3)ダイバータを設置して、無電流プラズマの長パルス実験を行い、定常運転に必要な基礎資料を得る。
(4)高エネルギー粒子のヘリカル磁場中での振舞いを研究し、炉心プラズマでのα粒子を対称としたシミュレーション実験を行う。
(5)トカマクとの相補的研究を行い、トロイダルプラズマの総合的理解を深める。

2)プラズマ諸量と装置規模
 前述の研究課題を実施するために目標とするプラズマ諸量として(i)高温・高密度・長時間閉じ込めモード、(ii)高イオン温度モード、(iii)高べータモードのそれぞれについて設定した。これらを達成するための装置規模として物理解析やスケーリングを通じて下記のように決定した。

プラズマの小半径(ap)=50-60cm
プラズマの大半径(R)=4m
プラズマ中心における磁場強度(B)=0-4万ガウス(超伝導方式)
加熱吸収パワー(Pabs)=15-20MW


1.3 大型ヘリカル装置(LHD)建設

 LHDは我が国の独特の開発の歴史を持つヘリオトロン磁場を用いた世界最大の超伝導大型核融合実験装置である。LHDを構成する(1)装置本体(2)各種加熱機器(3)各種計測機器はいずれも技術的に大変チャレンジングな内容となっているが、必要な試作開発を経て実機製作に入り、ほぼ計画通りのスケジュールで完成し、平成10年3月31日から実験を開始した。

 特に超伝導ヘリカルコイルの製作は世界的にも全く初めての試みであり、その試作開発には、高電流密度の導体の開発、ヘリカルコイル用高性能巻線機の開発、高精度の実機製作など合計6年の期間を要した。また、定常動作を目標とする高出カジャイロトロン発振器、負イオン源を用いた高出力中性粒子入射装置などの加熱機器の開発・実機製作を行った。電子温度・密度の詳細分布の高繰り返し計測を行うトムソン散乱装置やプラズマ電位を計測する重イオンビームプローブ装置など数多くの計測機器の開発もCHSでテストの後、実機製作を行い、現在多くの基本計測器がLHDに設置されている。


1.4 大型ヘリカル装置(LHD)実験

 装置本体は平成9年12月に大略完成し、LHD計画は成功裏にその建設期を完了した。初期運転は平成10年初頭より順謝こベルジャー、プラズマ真空容器の真空排気が開始され、コイル冷却により全てのコイルが超伝導状態に到達後通電テスト、磁気面計測、2.45GHzECR放電洗浄等の過程を経て、平成10年3月31日にはECHによるファースト・プラズマの生成に成功し、初期プラズマ実験開始となった。引き続き第1サイクル(平成10年3月〜5月)で磁場1.5Tにて84GHz(200kW×2)のECH実験を行った。その後休止期間中に機器の増設を行い、第2サイクル(平成10年9月〜12月)では磁場2.75TまでにおいてECH加熱に加えて3MWまでの中性粒子ビーム入射(NBI)加熱実験(100keV、3.5MW、1-20s)、およびイオンサイクロトロン加熱(ICRF)予備実験が行われ、Te〜Ti>2keV、Wp〜430kJ、τE〜0.2sと良好な結果が得られている。

 閉じ込め時間も従来の国際ステラレータ経験則を50%も上回る良好なプラズマを得、今後の展望を明るいものにした。世界で初めてNBI単独でプラズマを生成・加熱するなどの画期的な成果も上がっている。これは内部電流なしで外部コイルのみで閉じ込め磁場を作ることができるヘリカル系の長所を象徴した成果と言える。これにより実験条件の幅が大きく広がったと言える。

 計測器も密度分布を計測する遠赤外レーザー干渉計、電子温度・密度分布の高繰り返し計測が可能なYAGレーザートムソン散乱計測システム、イオン温度分布を測る荷電交換再結合光分光計測(CXRS)、不純物を観測する真空紫外・可視分光器などが速やかに立ち上がり詳細な分布計測を通じて研究に大きく寄与している。1ショットあたり200MBを超えるデータが収集蓄積されている。これら計測データをもとに、整備された各種解析コードやシミュレーションコードを用いたプラズマ物理解析が進展している。


1.5 CHSを用いた支援研究

 LHDのひな形とも言うべきCHS装置はLHDの支援装置として実験を行ってきている。
ヘリカル方式に対する数多くの新しい知見を得ると同時に、LHDに向けた周辺プラズマの制御、加熱、計測法の試作開発に実績を上げている。閉じ込め改善の試みや新しい加熱・計測法を大型装置にいきなり適用するのは、時間・コストの点で得策ではなく、機動性に優れた小型装置に先ず適用し問題点を洗い出すことが支援装置としての使命である。CHS装置は現在稼働中のヘリカル装置の中では、主半径Rが1mと小規模であるが、プラズマ小半径(a=20cm)、磁場強度(B=2T)、磁場のフラットトップ時間(1sec)、加熱パワー(NBI:1.6MW、ECH:0.8MW、ICRF:500kW)などは支援装置として遜色ないと言える。最高β値の達成やポテンシャルの脈動の発見など世界をリードするいくつかの研究成果を上げており、CHS実験はその役割を十分に果たしていると考えられる。



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