2.1 大型ヘリカル装置(LHD)計画の経緯

 大型ヘリカル装置計画は、我が国大学の核融合研究についての推進について建議された昭和61年の学術審議会報告「大学における今後の核融合研究について」に基づき、文部省大学共同利用機関である核融合科学研究所において平成元年から進められているヘリカル型磁場装置による核融合プラズマ実験研究である。昭和61年の学術審議会報告は、昭和59年から核融合部会の下に設けられた大学研究者のワーキンググループにおいて、それまで大学で多岐路線として研究されていた種々の方式の比較検討の結果を基盤にして策定されたものである。定常核融合プラズマ実現の可能性、トカマクとは異なる角度からのトロイダルプラズマの研究により炉心プラズマの理解を深めることや、我が国大学の育成した独自性のある研究である点を重視した結果である。この大型ヘリカル装置計画が了承されるまでの経緯を表2-1-1にまとめた。

 ヘリカル型装置によるプラズマ閉じ込めの研究は核融合研究の草創期から行われてきており、特に我が国およびドイツが1,000万度、1019m-3のプラズマの閉じ込めを実証したことが大きな基盤となった。大型ヘリカル装置計画立案から実験開始に至るまでに、世界各国で規模は大半径R=1〜2m、磁場強度B=1〜2T(日本 ; CHS、H-E、ドイツ ; W7-A、W7-AS、米国 ; ATF、HSX、スペイン ; TJ-II、オーストラリア ; H-1、ロシア ; L-2M、等)であるが種々のヘリカル型装置により閉じ込めの研究が進展している。電子及びイオン温度とも1keVを越えるレベルとなり、密度1019〜1020m-3のプラズマの研究が行われるようになった。MHD平衡安定についても、平均β値はCHS装置の2%以上達成などや、W7-ASのPfirsch-Schlüter電流低減の実証などの実験的研究により理解が進んだ。
閉じ込め性能に関しては、LHD実験則、Lackner-Gottardi則などの研究や、その後、多くの実験データを基に国際的協力研究によりIntenational Stellarator Scaling(ISS95)が作られている。エネルギー閉じ込め時間もW7-ASの50msを始めとしてap〜0.2m、B〜2Tのトーラス装置としてはトカマクと同等の閉じ込め性能を示すようになってきている。
ヘリカル型閉じ込め性能は現在まとめられた多くの実験データおよびトカマクのデータとの比較により、大略トカマクのLモードに近い閉じ込め性能を有していると考えられる(図2-1-1)。また、最近は幾つかの閉じ込め改善モードがヘリカル系装置でも観測、研究されている。改善率はH=1.3-1.4とまだ低いがトカマクのHモードに類似の現象が観測されプラズマの振る舞いも極めて良く似ている。磁場構造の制御、電場分布の制御、プラズマ回転による揺動抑制などのHモード閉じ込め改善が研究されていくことが予想される。また密度分布の急峻化に関連して高イオン温度モードも最近見い出され研究が進んでいる。密度限界の研究も進展し、ヘリカル系ではその回転変換角と等価なプラズマ電流で決まるGreenwald limitの2〜3倍の高密度での安定運転が可能となっている。

 10年前に物理設計、装置の技術設計を行いながらも、以上に述べたようなその後の研究進展を取り入れた実験研究が可能となるよう計画の推進に反映させた。

表2-1-1 核融合科学研究所創設までの沿革

昭和55年11月 学術審議会において、「大学等における核融合研究の長期的推進方策について」建議を行った。
昭和61年2月 学術審議会特定研究領域推進分科会核融合部会において、「大学における今後の核融合研究について」報告を取りまとめた。
「主な内容」
(1)大学における次期大型装置はヘリカル型とし、全国の研究者の英知を集結して、岐阜県土岐市に建設する。
(2)新大型計画の推進母体として、新たに大学共同利用機関を設立する。
(3)新大型計画以外の研究については、既存装置の活用等により、引き続き推進する。
昭和61年2月 文部省に「核融合研究を推進するための調査研究協力者会議」を設置して、学術審議会核融合部会報告「大学における今後の核融合研究について」の具体化方策について調査研究を開始した。
昭和62年度 大学における核融合研究の新大型計画に関する基本的構想について調査するため、「新大型装置等調査経費」が措置された。
昭和62年7月 名古屋大学プラズマ研究所の移転用地として、岐阜県土岐市下石町西山の約47万m2の購入を終了した。
昭和63年3月 核融合研究を推進するための調査研究協力者会議において、(1)核融合研究所(仮称)の組織及び(2)次期大型ヘリカル装置計画の概要について報告をまとめ、文部省に提出した。
昭和63年4月 名古屋大学に、核融合研究所(仮称)創設準備室及び創設準備委員会を設置した。
昭和63年6月〜7月 名古屋大学、京都大学及び広島大学の評議会において、名古屋大学プラズマ研究所を廃止して新機関及び同大学の学内共同教育研究施設に転換すること、並びに京都大学ヘリオトロン核融合研究センターの一部及ぴ広島大学核融合理論研究センターの一部を新機関へ転換することがそれぞれ承認された。
昭和63年7月 核融合研究所(仮称)創設準備委員会において、「核融合科学研究所(仮称)の設置構想について(中間まとめ)」を取りまとめた。
昭和63年7月 学術審議会総会(第63回)において、核融合科学研究所(仮称)の創設及び大型ヘリカル装置の建設が了承された。
昭和63年7月 原子力委員会核融合会議(第94回)及び原子力委員会において、核融合科学研究所(仮称)の創設及び大型ヘリカル装置の建設について報告が行われ、了承された。
平成元年2月 核融合研究所(仮称)創設準備委員会(第5回)において、「核融合科学研究所(仮称)の設置構想について(まとめ)」取りまとめ、文音階に提出した。
平成元年3月 「核融合科学研究所(仮称)の設置準備について(平成元年3月24日事務次官裁定)」により、所長及び教官の選考を行うための設置準備協力者会議を文部省に設置した。
平成元年3月 核融合科学研究所(仮称)の設置予定地の土地造成を終了した。
平成元年5月 核融合科学研究所が創設された。
図2-1-1 ヘリカル系のエネルギー閉じ込め時間とLHDの目標領域


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