3.1.1 LHD超伝導コイルのR&D

 大型ヘリカル装置(LHD)は世界初の全超伝導核融合プラズマ装置であり、その達成は超伝導工学と低温工学に大きく依存する。それは超伝導コイルに限らず、バスライン、低温構造材料、大規模低温ヘリウム技術等々を網羅し、何れも先進的な技術開発を必要とする。ヘリオトロン磁場配位は定常プラズマ研究を可能とし、かつその故に大容積プラズマ閉じ込め磁場の長時間保持には、電源に負担の少ない超伝導コイルシステムの採用が不可欠である。LHD超伝導コイルシステムの設計思想は、長時間の連続プラズマ運転に対応できる高度な信頼性の達成と設定されたが、超伝導・低温工学の分野においては上述の諸技術何れもが未経験の領域であった。

 LHDのプラズマ閉じ込め磁場は、R=3.9m、a=0.975m、L/m=2/10のヘリカルコイルにより形成され、中心磁場は第1期において3T、第2期において4Tである。ヘリカルコイルには高い磁場精度と、3次元連続巻きに適する導体の柔軟性が要求される。磁気面の形状と時間制御に、外直径が各4m、6m、11.5mの3対のポロイダルコイルが用いられる。これらは高い電磁力に耐える自己剛性を確保し、またパルス的磁場制御運転に適合できなければならない。1.6GJの電磁エネルギーを保持する、これら8本のコイルとその電磁力を支持する構造物は何れも低温ヘリウムにより4.4Kに冷却されるが、その冷却重量は850トンである。この他、超伝導バスライン、熱遮蔽パネル、断熱支持脚、それらの冷却制御機器等と、大型ヘリカル装置を構成するシステムの多くは低温度で作動する。そのため、冷凍機、冷媒分配制御、侵入熱遮蔽ならびに超伝導コイルの冷却安定性等もまた、綿密な検討と開発を要する重要な設計因子である。
さらにヘリウム温度で使用可能な、性状の明らかな工業的材料は著しく限定される。LHDのように現地組立・溶接に適用できる低温材料ならびに、数十GPaの剛性を必要とする構造体の強度等については、研究所自らによる開発研究が必要であった。

 超伝導コイルのR&Dは研究所設立準備室当時から大学間共同研究と研究所独自の両面で進められてきた。それらのR&Dは、1.候補サンプルによる導体開発、2.モデルコイルによるコイル構造、冷却方式、製作性等の評価、3.実機導体・実機コイル等の性能確認に区分されるが、これらの殆どはヘリウム冷却でかつ、電流、磁場は実機相当で行われた。この目的から、低温実験棟には250L/h大型ヘリウム液化機、1,000トン剛性試験引張り試験機、75kA直流電源設備等々の国内最大規模の大型実験設備が設置された。これらは何れもLHD開発ならびに先進超伝導技術の開発に貢献すると共に、共同利用機関としての研究センターに相応しい最新鋭設備となっている。
図3-1-1-1にLHDのために試作されたモデルコイルを示す。最終設計のヘリカルコイル導体とポロイダルコイル(外垂直磁場コイル)導体の断面および主要目を図3-1-1-2と3-1-1-3に示す。巻線機によるヘリカルコイルの製作状況を図3-1-1-4、本体棟で仮組立て中の3本のポロイダルコイルを図3-1-1-5に示す。実機超伝導コイルは何れも巻線完了の時点で世界最大の超伝導コイルとなったが、その定格性能を単独で確認する試験が実施できたのは、寸法最少で冷凍機能力等が辛うじて実機要求を充たし得る内側垂直磁場ボロイダルコイル1本のみであり、そのため残り7本のコイルは全てLHD建設完成後に予行なし本番として、かつ組み合わせての立ち上げ励磁となった。これらが成功裏に達成できたことは、上述の大型試験設備を駆使しての、多角度な超伝導コイルのR&Dに負うものである。

図3-1-1-1 LHD超伝導コイル用に試作したモデルコイル群

Conductor size 12.5mm×18.0mm
Superconducting material NbTi
Cooling type Pool-boiling
Nominal current at Phase I 13.0kA (6.9T, 4.4T)
Nominal current at Phase II 17.3kA (9.2T, 1.8K)
Diameter of stand 1.74mm
Number of stands 15
Copper to NbTi ratio 0.9
Diameter of filament 47mm
Number of filaments 726
Critical cureent density 1360A/mm2 (7T, 4.4K)
Total length 36km
Surface Treatment Copper-oxidized
図3-1-1-2 ヘリカルコイル導体の諸元と断面写真
Coil name IV IS OV
Conductor type CICC
Superconducting material NbTi
Cooling method Forced-flow
Operating current 20.8kA 21.6kA 31.3kA
Critical current 62.4kA, 6.5T 64.8kA, 5.4T 93.9kA, 5.0T
Conduct dimension 23.0×27.6mm 23.0×27.6mm 23.0×31.8mm
Conduct thickness 3.0mm 3.0mm 3.5mm
Void fraction 38%
Strand diameter 0.76mm 0.76mm 0.76mm
Number of strands 486
NbTi : Cu ratio 1 : 2.7 1 : 3.4 1 : 4.2
Strand surface Bare copper
Flow rate 5.0g/s 4.1g/s 5.0g/s
図3-1-1-3 ポロイダルコイル導体の諸元と断面写真

図3-1-1-4 ヘリカルコイル容器へ巻き線作業中の巻き線機とヘリカルコイル
図3-1-1-5 クライオスタット底板上に仮据え付け中の下部ポロイダルコイル群
(左後方は電磁力支持構造物下半部)


戻る



Copyright © 1995-2018 National Institute for Fusion Science. All rights reserved.

このページに関するお問い合わせは までお願いします。