3.1.4 LHDの冷却

 大型ヘリカル装置(LHD)の第1回目の冷却は平成10年2月23日に開始され、3月17日にヘリカルコイル及びポロイダルコイルの超伝導転移を確認、3月22日に予定通りの4週間で予冷を完了した。表3-1-4-1に第1回冷却試験の経過を示す。平成10年2月9日に圧縮機を起動し、24時間の連続運転を開始した。装置組立後の初めての運転であることから、冷却に先だって2週間の精製運転を行い、He冷却系内の不純物(酸素、窒素、水分など)濃度を2ppm以下まで除去した。寒冷供給温度80Kまでは、液体窒素で冷却したヘリウムガスと常温のヘリウムガスを混合してプログラムした温度勾配の寒冷を発生させ、被冷却体に供給した。寒冷供給温度80K以下は、He液化冷凍装置の7台のタービンを順次起動し、供給温度を下げていった。
被冷却体の温度が80Kになるまでは、被冷却体内の温度分布を監視し、温度差が50K以上になると自動的に寒冷供給温度をその時点の温度で一定に保ち、均温化をはかった後、温度降下を再開する保護プログラムを組み込んだ。また、温度制御した低温ガスを各被冷却体毎に冷却重量比で分配することにより、各被冷却体間に温度差がなく、同時に冷却されるように流量制御を行った。図3-1-4-1aに寒冷供給温度とヘリカルコイル、ポロイダルコイル、電磁力支持構造物、80K輻射シールドの出口温度の関係を示す。各被冷却体間には温度差がなく、寒冷供給温度に比例して一様に冷却されていることが分かる。図3-1-4-1bに各被冷却体内の最大温度分布を、図3-1-4-1cに1時間当たりの温度勾配を示す。最大温度差50度以下を保ちつつ、最大の温度勾配を得るように効率的に冷却きれていることが示されている。

 測定されたLHDの熱負荷を最終設計値と比較して表3-1-4-2に示す。LHDの設計及び開発段階における熱負荷軽減のための広範な努力により、熱負荷の最終設計値は、初期設計値の約半分に低減することができた。測定された熱負荷は最終設計値にほぼ等しく、装置の設計及び建設が非常に高精度かつ確実に行われたことが確認された。

 第1サイクル及び第2サイクルのLHD低温システムの運転経過を図3-1-4-2に示す。コイルを超伝導状態に保った定常運転を、第1サイクルで1,350時間、第2サイクルで2,359時間の長時間に渡って達成しており、安定な装置の運転並びにプラズマ実験を可能としている。懸念された系内の不純物による弁やフィルターの閉塞や熱交換器の効率低下等も徹底した不純物管理により定常運転中は発生しなかった。LHD低温システムは、設計に基づいた予定通りの冷却特性が確認されると共に、4ヶ月以上に渡って安定な連続運転に成功し、システムの持つ高い信頼性が実証された。

表3-1-4-1 LHD第1回冷却試験の経過
Date Events
2/9-2/22 Purification
2/9 Start He Compressors
2/23-3/22 Cool-down
(1) 2/23  Cool-down process start
(2) 2/23-3/8  Cool-down with LN2-HX15
3/9-3/18  Cool-down with Turbines
(3) 3/9  Start Turbines T1 to T5
 Change flow of 80K shield line
(4) 3/13  Start TurbinesT6 and T7
(5) 3/17  Helical and Poloidal Coils became superconducting state
(6) 3/18  SC Bus-lines became superconducting state
(7) 3/18-3/22  Cooling paths of Helical coil & Supporting structure changed
 Cool-down with LHe
3/23-3/28 Excitation Test of SC coils (<=1.5T)
3/29-5/17 Steady Operation for 1st Cycle Experiment
3/31 First Plasma of the LHD Experiment
5/14-5/15 Excitation tests for the coil power supplies
5/18 Emergency Discharge Tests of SC Coils(1.0T)
5/19-6/15 Warm-up

図3-1-4-1
a)LHDの第1回冷却曲線
b)被冷却体内の最大温度差
c)1時間当たりの冷却温度勾配

表3-1-4-2 LHDの熱負荷

Items Design value Measured value
4.4K Refrigeration
 Helical coils 70W 87W
 Supporting structure 278W 148W
 Poloidal coils total 210W 217W
 Superconducting bus-lines 150W 145W
 H/C & P/C valve box 23W (1)
 CL cryostat 310W (1)
 Transfer lines 1010W(2)
 4.4K total heat load 2051W 1940W
4.4K Liquefaction
 Current leads 650L/h (3.0T) 434L/h (1.5T)
80K Refrigeration
 Inner 80 K shield 5.54kW 3.36kW
 Outer 80 K shield 1.87kW 3.66kW
 Cryogenic post 0.82kW 0.80kW
 H/C & P/C valve box 1.14kW 1.12kW
 Superconducting bus-lines 1.50kW 1.15kW
 CL cryostat 0.62kW 0.54kW
 Transfer lines 1.5kW(2)
 80 K total heat loads 12.99kW 12.13kW
(1) Not measured directly, using final design values
for the sum of the total heat load.
(2) Estimated value from the measurements of the
units before assembling.

図3-1-4-2 LHDの冷却運転経過

超伝導転移測定

 LHDの冷却の際には、ヘリカルコイル、ポロイダルコイルともに、冷却にともなう巻線超伝導導体の抵抗率の変化についてモニターを行っている。特に、被冷却系全体が液体ヘリウム温度に到達した時点における巻線の超伝導転移の確認を行うことが、もっとも重要な監視項目である。このために、各コイル(ヘリカル:6ブロック、ポロイダル:6コイル)には、冷却開始時点(常温)より10Aほどの直流電流を常時印加し、これに伴って発生するコイル両端電圧について連続的に自動計測を行っている。一例として、第2サイクルにおける冷却時に測定されたヘリカルコイル巻線の超伝導転移の様子を、図3-1-4-3に示す。冷却開始時点より約18日後の平成10年9月5日、午前10:00から12:00にかけて、すべてのブロックにおいて巻線が超伝導状態になり、抵抗値が0となっていることが認められる。常温における抵抗値と超伝導転移の直前における抵抗値との比は残留抵抗率RRRと呼ばれるが、この測定によりヘリカルコイル導体に対するRRRがほぼ1,000であることが正確に求められた。また、同種の測定は、プラズマ実験終了後の加温過程においても行っている。この場合には、超伝導から常伝導への逆転移が起こる際に、それまで超伝導体内に捕捉されていた磁束が放出されることに伴う起電力の発生が顕著に確認されている。

図3-1-4-3 第2サイクルにおけるヘリカルコイル各ブロックの超伝導転移の様子


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