3.2 LHD実験成果

 LHDでは平成10年3月31日にファーストプラズマの点火に成功し、その後引き続き5月13日まで第1サイクルのプラズマ実験を行った。第1サイクルのプラズマは84GHzと82.6GHzのジャイロトロンを用いた第2高調波による電子サイクロトロン共鳴加熱ECHによって生成した。入射パワーは400kWである。第2サイクル・プラズマ実験は、9月!6日にECHプラズマを生成するところから開始し、中性粒子ビーム入射NBIによる加熱実験、イオンサイクロトロン共鳴周波数ICRFによる加熱実験等を行い、平成10年12月11日に予定通り終了した。表3-2-1に第2サイクル終了時までに達成した実験条件および第1期実験計画での目標を示す。NBIによる最大加熱入カパワーは、100keVで3.5MWであった。プラズマ実験は、第1及び第2サイクルとも従来の計画どおり1.5Tで行ったが、第2サイクル終了前の4日間は、試験的に2Tを超える領域で行った。第2サイクルの最終日には、磁気軸位置Rax=3.6mで2.75Tとこれまでで最も高い磁場でプラズマ実験を行うことに成功している。

表3-2-1 実験条件

Magnetic Field Attained by 2nd Exp. Campaign
2.75T at Rax=3.6m
Target of 1st Stage of Exp. Plan
3.0T at Rax=3.9m
ECH Power 0.4MW for 0.5 sec 1MW at steady state
NBI Energy
Power
100keV
3.5MW for 1sec
0.7MW for 22sec
180keV
15MW for 10sec
0.5MW (100keV) for 90sec
ICRF Power 0.3MW for 0.5sec 9-12MW for 10sec
3MW at steady state

 真空磁場での磁気面計測は、第1及び第2サイクルの終了時に、電子ビームと蛍光メッシュを用いて行った。第1サイクル終了後は、Rax=3.75mでB=0.0875Tと0.25Tで計測を行い、入れ子構造の磁気面が存在しその形状が計算結果と一致することを確認している。更に、この実験でトロイダル磁場が0.0875Tの場合、最大で約13cm幅のm/n=1/1のアイランドが見出された。このアイランドは、地磁気を計算に入れて得られたm/n=1/1のアイランドの幅とそのポロイダル方向の位相が実験で得られたものとほぼ一致したことから、地磁気によって形成されたもので、コイルの設置誤差等による不整磁場は小さいと思われた。
しかし、第2サイクル終了時に、B=2.75T、Rax=3.6m等の磁場配位を用いて行った高磁場磁気面計測では、m/n=1/1の場合、2mmのコイルの許容設置誤差で生じるアイランドの幅4cmの2倍の幅、8cmを持つアイランドが見出された。これを図3-2-1(a)に示す。発生原因は現在解析中であるが、ポロイダルコイルの芯ずれや傾き等の設置誤差、電流供給部の影響、強磁性体の存在等によるものと思われる。図3-2-1(a)に示されているアイランドのポロイダル方向の位相に、ローカルアイランドダイバータ(LID)用に設置したLIDコイルが形成するアイランドの位相をほぼ一致させることができるため、図3-2-1(b)に示したように、LIDコイルを用いて1/1と2/1のアイランドを同時にほぼ消去することが可能である。残ったアイランドはコイルの許容設置誤差で生じるアイランドより小さく、LHDに必要とされる磁気面精度はLIDコイルにより確保された。プラズマの閉じ込めに実際に使われる磁場配位をこのような高磁場下で測定し、しかも補正した例は他になく、定常の超伝導ヘリカル装置ならではの成果といえる。アイランドがプラズマに与える影響については、第3サイクルの初めに確認する予定である。本報告では、アイランドが打ち消されていない状態で得られたデータを示す。


図3-2-1 蛍光法で測定された磁気面。B=2.75T、Rax=3.6m
(a)LID無し (b)LID有り

 図3-2-2は、第2サイクルで得られた全ショットの蓄積エネルギーをショット番号の関数として表しており、プラズマパラメーターがショット毎に良くなって行く様子を端的に示している。この図でショット番号が6643より前のものはB=1.5Tで得られたものである。磁場が2Tを超える実験は数日しか行っていないが、蓄積エネルギーの最高値が不連続に増加していることからも明らかなように、β値以外の全てのプラズマパラメーターの最高値がここで更新されている。この図は、高い磁場で閉じ込めの良いプラズマが実現されることを明確に示している。磁場が1.5Tの実験領域で蓄積エネルギーがショットを重ねる毎に増えているのは、NBIの入射パワーが増えていることに加えて壁のコンディショニングが進んでいるためである。第1サイクルではECR放電洗浄を、第2サイクルではグロー放電洗浄を中心に用いて壁のコンディショニングを行った。ガスはヘリウムを主として用いた。初期プラズマの基本的な問題は酸素不純物の混入であるが、放電洗浄で除去した酸素量は、第ユサイクル、第2サイクルとも約100分子層で、約50gである。この酸素量が除去されて初めて大きな蓄積エネルギーが得られることが分った。
また、第1サイクルと第2サイクルの前半は、プラズマに酸素不純物が混入するのを防止するため、チタンゲッターを施して実験を行った。

図3-2-2 第2サイクルで得られたショット番号と蓄積エネルギーの関係

 NBIによる加熱実験は、B=1.5T、Rax=3.75mで84GHz及び82.6GHzジャイロトロンの第2高調波を用いたECHによりターゲットプラズマを生成し、これにNBIを入射することによって行った。NBIのガス種は水素であるが、ガスパフをヘリウムガスで行った場合、高密度プラズマを比較的簡単に実現できること、しかもこれを容易に制御、維持できることが分った。
これに対して、水素ガスパフの場合、特に入射パワーが大きいと、電子密度がNBIの入射直後に一旦は増加するがすぐに減少する現象が見出された。密度が低いと荷電交換率が小さい水素の方が加熱吸収効率が劣化することから、水素ガスパフ放電の蓄積エネルギーは、ヘリウムパフ放電に比べて大きくなり難いことが分った。また、電子密度の最大値もガスパフでは制御が困難なことが明らかとなった。密度の減少はプラズマエッジにおけるプラズマの温度が高くなると生じること、LHDの壁はステンレスであること等を考慮すると、密度減少時には壁がプラズマ周辺で荷電交換したややエネルギーの高い中性水素をポンプし、グローバルなリサイクリング率が1より小さくなっているものと思われる。

 水素ガスパフを用いた1.5T実験は、水素プラズマの制御にガスパフ以外の制御法が必要であることを示している。この制御法として、ペレットによる粒子補給、2秒程度以上の長時間放電等が検討され、その予備的実験も行われた。ステンレス壁は1秒程度で飽和すると考えられている。ペレット入射実験では、ターゲットプラズマの温度が違うと得られる密度が異なるという結果が得られた。これは、ペレットの溶発がプラズマの温度に依存し、ペレットの到達位置が異なるからである。NBIが入射した直後の温度が低いプラズマにペレットを打ち込むと、ペレットはプラズマの中心近くまで到達し、プラズマは高密度となる。しかし、ペレットを打ち込んでも急激な密度減少が発生して密度を一定に保つことができないため、ペレットで密度を一定に保つにはペレットの連続入射が必要であることが分った。
長時間放電実験は、ガスパフをヘリウムガスで行い、NBIの入射を長時間持続させることにより行った。長時間放電実験は、将来の定常放電実験も視野に入れて行っており、今後、加熱パワーの増強、放電の長時間化、水素ガスパフ化等を漸次進めていく予定である。



目次へ / 次頁へ




Copyright © 1995-2018 National Institute for Fusion Science. All rights reserved.

このページに関するお問い合わせは までお願いします。