コイルの励磁試験は、第2サイクル終了時、Rax=3.75mでB=2.75Tまで行った。84GHzのジャイロトロンの基本波または168GHzのジャイロトロンの第2高調波でプラズマを生成するためには、B=3Tが必要である。このため、2.5T近傍でのコイルの馴らし運転に加えて、第3サイクルでECHによるターゲットプラズマをこの磁場で生成できるか否かを試験しておく必要があり、〜2.5Tの磁場を用いた実験を第2サイクルの最後に行った。84GHzのジャイロトロンを用いて実験した結果、基本波による周辺加熱により2.2T以上の磁場があればECHでプラズマを生成できることが明らかとなった。
また、ECHのターゲットプラズマが全くない状態でNBIを単独で入射させ、ガスパフを適度に行うと、ECHのターゲットプラズマを用いた場合に比べても遜色のないプラズマが生成できることが見出された。これはこれまで報告されたことのない画期的な実験である。これらの結果は、プラズマの生成が磁場の値に依存せずに行えることを示しており、〜2.7Tの磁場を用いる第3サイクルの実験に不安がないことが確認された。図3-2-3はB=2.5T、Rax=3.6mで得られた水素ガスパフによる典型的な放電波形を示している。NBI加熱パワーは3MWである。この時、プラズマ周辺の温度は、B=1.5T、Rax=3.75mで得られたプラズマ周辺の温度とほぼ同じ値になっているにもかかわらず、密度減少が顕著に生じず、密度がほぼ一定に保たれ、ガスパフによる密度制御も可能となった。
図3-2-4に、これまでに得られたプラズマの中で、最も温度の高かったショットの温度分布とその密度分布を示す。この図から、イオン温度、電子温度ともプラズマ周辺で高いことが分る。また、密度分布は実験全般を通じてホローから、この分布例のような平坦な分布を持ち、周辺部で急激に減少している。これらは、後で詳しく述べるが、プラズマの閉じ込めを改善するための鍵になると考えられている。

図3-2-3 水素ガスパフを用いて得られた典型的な放電波形。
上段:蓄積エネルギーWpとECH、NBIの入射
中段:線平均電子密度刀。と総放射損失Prad
下段:OVとCIIIの不純物ライン放射。
図3-2-4 電子・イオンの温度分布Te、Ti及び電子密度ne分布 B=2.5T、Rax=3.6m

 実験で得られたプラズマについて種々の解析を行い、従来の実験データの延長線と比較して、より高いプラズマ性能が得られていることが分った。まず、エネルギー閉じ込め時間について述べる。これまで国際共同作業により中型ヘリカル装置の実験データが集積され、そのデータベースを元にIntemational Stellarator Scaling 95が提案された。これによると、そのエネルギー閉じ込め時間τEは経験式

τE=0.079a2.21R0.65p-0.59ne0.51B0.83l2/30.4

(ここでτEはs、小半径aと大半径Rはm、加熱吸収パワーPはMW、線平均密度neは1019m-3、そしてBはTの単位を取る。l2/3は規格化小半径2/3での回転変換)で表される。また、ヘリカル系は同規模のトカマクでのLモードと同等の閉じ込め性能を有していることが示された。トカマクのLモード則と比較して顕著な違いは密度に対する有為な正の依存性である。図3-2-5にこのスケーリング則と実験値の比較を示す。

図3-2-5 エネルギー閉じ込め時間の実験値とスケーリング則(ISS95)との比較

 LHDで得られたエネルギー閉じ込め時間の個々のプラズマパラメーター依存性はこれまでの理解と合致しているが、絶対値がこのスケーリング則より50%程度系統的に良い。さらに磁場強度2.75Tで内寄せ(R肌=3.6m)の条件では約2倍の改善が観測され、閉じ込め時間は0.26秒に達している。このようにエネルギー閉じ込め時間に関しては所期の目標を既に達成したといえ、大型トカマクと比肩できる領域に入ってきた。LHDを加えた経験的スケーリング則の見直しについては単純な統計解析からは次元制約条件を満足するような表現式が得られず、何らかの無次元パラメーターの導入が必要と考えられる。

 輸送に関しては分布計測を基にした1次元の解析を進めている。図3-2-6の熱伝導係数χの解析例を示す。電子温度が2keV程度であるため、イオンヘ流れるNBIパワーは電子への50%〜90%程度であり、熱輸送の損失機構は電子、イオンとも熱伝導である。衝突頻度は電子、イオンともヘリカル捕捉された粒子のバウンス周波数との比で0.3〜0.7であり、無衝突ヘリカルプラズマの特性が現れる領域に入っている。電子については新古典拡散理論から予想される値の2〜3倍程度大きいが、この異常度は同じ衝突頻度を持った中型ヘリカルプラズマ(CHS, R/a=1m/0.2m)と比較して一桁改善されている。
この異常輸送の低減は装置の大型化による単純なポロイダルジャイロ半径とプラズマ小半径の比の減少だけでは説明できない。またイオンについては実際に形成されていると考えられる温度程度のポテンシャルの影響を考慮した新古典拡散理論と矛盾していないことが分る。これは温度が上昇しても衝突頻度に反比例するヘリカルリップル輸送がイオンに関しては電場で抑えられることを示唆している。

図3-2-6 電子及びイオンの熱伝導係数の径方向分布。実験値χexp、新古典拡散値χNC、新古典拡散のトロイダルリップルからの寄与χsym、ヘリカルリップルからの寄与χrip。電場を考慮しない場合を赤線、考慮した場合を青線で示す。

 MHDについては、既に体積平均べータ値1.0%に達していることから、有限べータの影響は重要である。平衡に関してはシャフラノフシフトと考えて矛盾のない変化が軟X線の分布計測で観測されている。また、安定性については内部崩壊などを起こす劇的な不安定性はこれまで観測されていない。

 ヘリカル系は本質的にトロイダル電流を必要としないため、逆にその発生を詳細に観測・解析することが可能である。ECHおよびNBIのバランス入射時にも回転変換を増加させる方向の電流が最大で10kA観測されており、その方向やプラズマ圧力依存性がブートストラップ電流の理論により良く説明できる。NBIの一方向入射時には最大で40kmの大河電流(ビーム駆動電流)が観測されている。電流の時間変化は閉じ込め時間のスケールより1桁程度ゆっくりしており、長い時間スケールでの実験が必要であるが、この点LHDはその定常運転能力により優れた研究が期待できる。

 LHD実験の重要な課題の一つは、周辺制御による閉じ込め改善である。高効率の排気により周辺温度を数keVに上昇させることで閉じ込め改善を目指す高温ダイバータ運転がLHD設計段階で提案され、ダイバータ排気装置等の開発が鋭意行われている。第1,2サイクル実験では、アクティブな排気なしでも、ステンレス真空容器壁による壁排気が存在している。このような壁条件下でトカマクのHモードと同じような急峻な温度勾配を持つペデスタルが温度分布に存在していることが観測された。図3-2-7(a)は、トムソン散乱によって得られた電子温度分布で、周辺部に緩やかな温度ペデスタルが存在している。測定は、大半径方向Rに沿って行われているがペデスタルの存在する周辺部では、磁気面がX点に向かって大きく拡張しているので、温度が磁気面の関数であるということを使って短軸方向Zで温度分布をプロットする方がより理解しやすい。温度分布をZ方向にプロットすると(図3-2-7(b))、ペデスタルがより鮮明になる。周辺部の▽Teがコア領域に比べてかなり大きいので、周辺部の密度ηとχの積がかなり小さいことを意味する。また短軸小半径方向Zでのペデスタル幅は、4〜6cm程度であり、ペデスタルの肩
での温度Tepedは、最高値として650eVにも達している。

図3-2-7 電子温度分布:温度測定は、Rに沿って行っている。Z>(<)0領域は、R>(<)3.7mにそれぞれ対応している。 図3-2-8 温度ペデスタルの時間発展



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