LHD配位では、開いた領域の磁場構造が複雑である.最外殻磁気面の外側には、エルゴディック領域があり、その外には、より磁力線長の短い領域が存在し、更にその外に存在するX点を通って、ダイバータ板に到る磁力線群がある(図3-2-7(c))。Teは、開いた領域(R>4.65m)では、〜50eV以下で、ダイバータ板手前の温度と同程度になっている。
電子密度分布は、開いた領域でも大きな勾配が存在している。そして、温度が立ち上がりはじめる位置(R=4.65m)で、neは既に平均密度の〜70%にも達している。即ち粒子閉じ込めが、開いた領域で行われていることになる。これは、LHDのエルゴディック領域のようなダイバータ板までの磁力線長が〜300m以上の領域では、低温プラズマは、充分に閉じ込められるので不思議なことではない。ただ開いた領域での粒子閉じ込めの改善は望めない。更に高温周辺プラズマを生成するには、密度勾配の高い領域を最外殻磁気面内に移動させることが重要である。第1,2サイクルの実験は、磁場は、主に1.5Tであったが最終段階で20ショット程度〜2.75Tでの放電を行った。B=2.75T、Rax=3.60の放電では、閉じ込めが2倍程度良くなり、温度が立ち上がる位置でのneは、平均密度の〜30%に下がり、高▽Teと高▽ne領域がより重なって、閉じ込め改善の観点からはより望ましい状態になっている。

 図3-2-8には、ペデスタル温度の時間発展を示す。NBI入射直前(t=400ms)のECHプラズマ(ne〜1×1019m-3、中心温度Te0〜300eV)は、周辺部(ρ>0.6)が、〜30eV以下の収縮したプラズマである。NBI加熱により高温プラズマ領域が拡大し、t=470msで最外殻磁気面に達し、10-20msでペデスタルが形成されることがTepedとダイバータヘの粒子流束の立ち上がりで分る。またガスパフを切った100ms後(t=700ms)に密度が減少し始めるが、Teped、Te0、Wpは増加し、一方Te0-Tepedは、ほぼ同じ値に維持されている。
Tepedは、Wpのピーク時で420eVでTepedの〜45%であり、平均温度の〜80%にも達している。この間のWpの増加は1〜30%にも達する。一般的には、この密度領域では、密度とともにWpは上昇する。これは、同じグローバルパラメーター(B、ne、P)に対して、Tepedの値に応じて閉じ込めの違った状態が存在することを意味する。多くのNBI加熱の放電では、Tepedが平均温度の70%程度であるのでWpは、ほぼneTepedに比例し、TepedがWp、そしてτEを決める。

 Hモード放電では、ELMが発生して、周辺部の粒子、エネルギーが繰り返しはき出される。ELMは圧力勾配が限界値を越えると不安定になるバールーニングモードによるもとの考えられている。LHDの周辺パラメーター(温度、密度)を見ると、同規模のトカマクのHモードパラメーターと同程度であり、また周辺の規格した圧力勾配▽PN(=a▽P/(B2/2μ))も、0.07と大きい。にもかかわらずLHDでは、ELMのようなMHDの活動は観測されていない。

 ペデスタルの急峻な勾配の領域は、最外殻のすぐ内側にあるが、これまで実験に使った配位でのl=1面は、周辺(0.9<ρ<1.05)に存在しているのでl=1面の周りとも解釈できる。ある特異なケースとしてNBI加熱によるプラズマの拡大時に、高Te勾配領域が内部(ρ=0.8)に現れたがこの位置は、l=1面のすぐ内側であった。それ故にl=1の有理面、またはエラー磁場により発生しているアイランド(m/n=1/1)が何らかの役割をになっている可能性がある。

 アクティブな閉じ込め改善の方法として周辺部をLIDで制御する計画になっているが、その予備実験の一貫として、また周辺閉じ込め機構の理解を深めるために外部摂動磁場によりアイランド(m/n=1/1)を発生させ、プラズマヘの影響を調べている。LIDのヘッドはまだ製作されていない。しかし、LIDコイルの作るLID磁場配位がプラズマに与える影響については、既に第1及び第2サイクルで予備的な実験を行い調べられている。ECHプラズマをLID磁場配位中で生成した時とLID磁場配位でないLHDの標準磁場配位(Rax=3.75m)中で生成した時、両者に大きな違いが見られる場合がある。
標準磁場配位中でECHのパワーとガス量がバランスしてプラズマの半径が小さいまま放電が終了するような場合、これにLIDコイルによる磁場を加えるとプラズマはセパラトリックス近傍まで広がることが分った。この時、線平均密度はあまり変化しないが、蓄積エネルギーが大きく増加するため、LIDを用いない時に比べて、閉じ込め時間は長くなる。しかし、プラズマの半径が大きくなっているため、スケーリング則から抜け出るような閉じ込めの改善は見られない。標準磁場配位中で既にプラズマがセパラトリックス近傍まで広がっている場合にはLIDの効果は殆ど見られなかった。
また、やはりプラズマが十分に広がっているNBI入射実験では、アイランドで閉じ込め領域の体積が減少した分だけ、蓄積エネルギーが減少することが分った。ICRFのハーフターンアンテナをリミターに用いて行ったリミター実験では、不純物による放射電力が増加してプラズマが崩壊する現象がLIDコイルによる磁場を加えることにより抑えられ、放電が最後まで持続することが見出された。これはLID磁場配位が周辺部への不純物の流入を防ぐ働きをしていることによるものと考えられる。
LIDを用いた周辺制御とプラズマの閉じ込めの改善実験はヘッドを製作し、LHDに装着してから本格的に行われるが、LID磁場配位だけでもこのようにプラズマに大きな影響を与えることが明らかとなった。図3-2-9の温度分布には、アイランドによるl=1周りの平坦化が明確に分る。アイランドを大きくすると、ペデスタル部が崩れ始め、それに応じて閉じ込め時間が減少する。またアイランドによる密度の平坦化も観測している。アイランドの重畳の狙いの一つとして、アイランドによりエルゴディック領域内の磁力線長を実効的に短くして密度を1×1018m-3程度以下に低く平坦化する。
それによりアイランド内側セパラトリックスの内側に急峻な密度勾配が形成され、閉じ込め改善がもたらされるというシナリオであったが低密度に抑制できず、今後の課題となっている。

 第1,2サイクル実験では、自然に備わるオープンダイバータ配位で行われた。ダイバータ板は、真空容器と同じく、ステンレスでできており、ダイバータプラズマは、ダイバータ板手前でシート状になっている。静電プローブ測定によって、その幅は〜1cmであり、ダイバータ板上のその中心位置から磁力線を追跡すると、他のダイバータ板に到る距離が、1,000m以上になっている。NBI加熱中のダイバータプラズマの代表的な値は、3〜30eV、0.1-1.0×1018m-3である(図3-2-10)。現在、測定は、1ヶ所のみで行った。粒子、エネルギー流がヘリカルに一様ではないが、仮に一様と仮定すると、ダイバータ板への全熱入力は、数100kW程度となり、加熱入力熱の10〜20%にあたる。

図3-2-9
アイランド(m/n=1/1)によるl=1面近傍の電子温度分布
の平坦化。(b)アイランドの存在を示す磁力線プロット
図3-2-10 ダイバータプラズマの電子温度、密度

 LHDの研究目的の大きな柱として長時間・定常実験が上げられる。第1,2サイクルでは、予備実験と位置付けて、以下内容の実験を行った。(1)ECH放電における真空容器内残留マイクロ波強度の測定、(2)ECH間欠運転によるプラズマ持続時間の長時間化、(3)NBIによる長時間放電、(4)ECHによる長時間放電(duty95%の2分放電)。特筆すべきものとしてNBI長時間(22秒)放電の達成がある(図3-2-11)。入射パワーはポート通過で660kWであった。また、放電はNBIの冷却水インターロックで終了しており、プラズマ放電はさらに持続できたものと考えられる。プラズマ密度は3×1018m-3でほとんど一定に保持されており、中心イオン温度(約1keV)も放電中はほぼ同じに保たれている。不純物レベル及び放射損失も低く抑えられた。今後は当面の目標である3MW定常実験に向けて、給電システムも含めて各加熱装置の増強と粒子制御のための粒子供給法及び排気法を検討し、その設備設置を進めていく予定である。

図3-2-11 NBI長時間放電波形

 ICRFによる試験的実験はハーフターンアンテナを用いてB=1.5Tで行われた。ガス種としてはヘリウムガスを用いて、これにマイノリティとして水素ガスを混ぜることにより実験を行った。その結果、ICRFを印加しても密度は殆ど変化せず、蓄積エネルギーが増加することが分った。これはプラズマの温度が上昇していることを示唆している。実際、トムソン散乱計測により、電子温度が上昇していることが確認された。この結果を元に、ICRFは、第3サイクルではMW級の出力と伝送を実現させ、本格的な加熱実験を行うことになっている

 表3-2-2にこれまで得られたプラズマパラメーターをまとめた。平均べータは既に目標値5%の1/5に、また、核融合三重積は目標値1×1020keVm-3secの1/7まで到達している。今後、加熱パワーを増力してより温度の高いプラズマを目指すとともに周辺部を制御して閉じ込めの改善を目指す予定である。

表3-2-2 第2サイクルまでの達成プラズマパラメーター。高温度、高閉じ込めは同時達成値。

Te Ti τE Pabs ne
High Temperature 2.3keV 2.0keV 0.15sec 1.8MW 6.2×1018m-3
High Confinement 1.2keV 0.26sec 1.5MW 3.8×1019m-3
nτT=1.4×1019keVm-3sec
Maximum Stored Energy Wp=0.43MJ
Highest Beta <β>=1.0%
Maximum Density ne=6.3×1019m-3 (Helium gas puff)
ne=7.0×1019m-3 (Hydrogen pellet)


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