3.3.3 プラズマ輸送と径電場

A.新古典理論

新古典理論での解析

 LHDの粒子・エネルギー閉じ込め性能を新古典論の範囲で解析した。ヘリカル系配位には幾何学的対称性がないために、プラズマ拡散の理論的解析には本質的に三次元的な取り扱いが必要となる。そこで、3次元MHD平衡計算コード(VMECコード)およびE×Bドリフトの影響に注目して新古典論的拡散係数を求める計算コード(DKESコード)を用いることにより、拡散の3次元的解析を行った。

 LHDの標準配位にたいして拡散係数を評価した結果の一例として、中心β値が6%のとき、プラズマの温度が4keV近くで径電場が分岐し、正の大きな電場がつくられ、そのことにより、輸送係数が大幅に改善されることを明確化した。

新古典及び異常輸送の統一的定式化

 異常輸送を軽減させる為のプラズマ回転が生ずるか否かの判断には、回転を減衰させる粘性機構の解析が重要となる。新古典輸送はプラズマの粘性と密接に関係しており、Hモードプラズマの理論モデルにおいては新古典及び異常輸送を同時に取り扱う必要がある。静電揺動の存在する軸対称トーラスプラズマにおける新古典・異常輸送を統一的に取り扱う理論を運動論方程式のアンサンブル平均及び揺動部分を基に定式化した。

 新古典・異常輸送の統一的定式化を電磁揺動の存在する非軸対称トーラスプラズマの場合に拡張し、エネルギー・エントロピーバランスを調べ、乱流揺動による電子・イオン間の異常熱交換が異常輸送フラックスの一つとしてエネルギーバランス方程式に現れることを見出した。また、新古典・異常輸送の統一的理論を高速でトロイダル回転するプラズマの場合に拡張した。

高エネルギー粒子による径電場の生成シミュレーション

・ECHによる電場遷移
 ECHの第二高調波加熱により生成される高速電子の損失は径方向の流束を増加し、軽電場形成機構に大きく影響を与える。CHSにおいてECHのパワーを変えて理論との比較を行い、径電場の遷移現象を確かめた。LHDにおいてもECHによる電場の制御と閉じ込め改善との関連性は重要なテーマである。

・ICRF加熱粒子による電場の生成と閉じ込め改善
 ICRF加熱においては、高エネルギーな捕捉粒子が発生し、その径方向の拡散により、径方向の流束をつくり出す。この流束が強い径電場を生成し、高エネルギー粒子やバルクプラズマの閉じ込めに影響を与える可能がある。そこで、ICRF加熱シミュレーションにより高エネルギー粒子流束を評価し、バルクプラズマとコンシステントに決まる径電場を求めた。結果として、13MWの加熱を行うことにより、プラズマ周辺にトカマクHモード時と同程度の大きな負の径電場が生成され、バルクプラズマ閉じ込めを改善する可能性があることが示された。

・NBI加熱粒子による電場の生成
 CHSで観測されたプラズマ周辺における新古典理論で説明できない強い負の径電場を解明するため、NBI加熱によるビーム粒子流束を取り入れて径電場の解析を行った。結果として、プラズマ周辺においてはビーム粒子流束がバルクプラズマ流束に比べ大きく、ビーム流束が観測された負の径電場に大きな影響を与えていたことが示された。LHDにおいても、弱磁場においては同様な強い負の径電場が発生する可能性がある。

回転と閉じ込め改善

ポロイダル回転の分岐理論は数多くのトカマクにおいてL-H遷移を説明する理論として適用されてきている。この理論をステラレータ/ヘリオトロン配位に適用できるように拡張し、それに基づいて、多様なステラレータ/ヘリオトロン配位におけるL-H遷移の可能性を評価した。図3-3-6は、規格化ボロイダル粘性を、真空磁場における磁気軸シフト量が異なるLHDの3つの配位(磁気軸シフト -30、-15(標準配位)、-0cm)のr/a=0.5の磁気面において評価した結果を表している。磁場のトロイディシティに起因したポロイダル粘性の極大がポロイダルマッハ数Mp<2付近に現れている。さらに、磁気軸を内側にシフトさせることによって、磁場のトロイディシティが減少してMp<2における粘性が大きく減少することが分かった。LHD標準配位の磁気面では、ポロイダル方向の運動量の釣り合いには3つの根が存在し、径電場の遷移現象が観測される可能性が示唆された。

図3-3-6 ポロイダル粘性の磁場配位依存性(左図)と電場遷移の可能性(右図)

B.異常輸送と乱流

抵抗性交換型モード乱流と径電場の効果

 ヘリカル系プラズマにおける電場による異常輸送の低減の可能性を探るため抵抗性交換型不安定性に対する径方向電場の効果を調べ、ポロイダルシアーフローによる抵抗性交換型モードの安定化のための条件を導いた。特にトカマク・ヘリカル系プラズマのHモードにおけるフロー生成機構を調べるため、弱非線形理論による解析とシングルヘリシティー非線形シミュレーションを行い、抵抗性交換型乱流におけるレイノルズ応力によるシアーフローの自発的形成とそれに伴う異常輸送の低減を明らかにした。高温で粘性係数が小さくなると、シアーフロー生成が容易となりL-H遷移が生じる可能性を示した。更に、抵抗性交換型乱流の3次元マルチヘリシティー非線形シミュレーションを行い、低モード数の有理面に生ずる長波長の交換型モードによるレイノルズ応力の方が短波長モードに比ベシアーフロー生成に有効であることを確認した。

微視的(ジャイロ運動論的)不安定性、イオン温度勾配(ITG)モード

 回転プラズマの異常輸送を記述するため新しいジャイロ運動論的方程式を導いた。この方程式より新しい運動論的異常粘性の表式を導き、トロイダル回転するプラズマにおけるITGモードの線形成長率、周波数、モード構造を調べた。複素周波数平面における分散関数の適切な解析接続を行い、局所モデルにおけるITGモードの初期値問題を解いた。また、ヘリカル系プラズマにおけるITGモードの線形解析へと発展させ、成長率、周波数、モード構造のヘリカル磁場トロイダル周期数Mに対する依存性を調べ、Mの増加とともに結合長の減少による安定化が起きることを示した。

自已維持乱流

 従来の線形成長率をもとに乱流輸送を評価する方法論に替わる新しい理論方法を提唱した。すなわち、プラズマ乱流は、線形不安定性の発達によって維持されるのではなく、(線形安定・不安定に拘わらず)非線形不安定機構によって維持されうることを示した。
そしてその機構を「白已維持乱流」と呼び、乱流の定常状態を求め乱流輸送係数の例を求めることができた。トカマクやHeliotron-E等の実験観測との比較から、閉じ込め時間のスケーリングだけでなく輸送係数の空間分布や内部輸送障壁の発生などの諸側面に対し従来より優れた理解を与えることが確認された。今後、LHDでの詳細比較を予定している。

電場分岐による内部輸送障壁の存在

 径電場がトーラス閉じ込めに決定的な重要性を持つことを世界に先駆けて提唱し、その役割を総合的に研究した。ヘリカル系では電場の極性が正の領域とそれが負の領域が同時にプラズマ中に存在することが可能で、両者が接する位置に、電場が急変する電場界面が維持されることを理論的に示した。そこでは、輸送障壁が生まれうることを理論的に予言した。これがCHS実験での内部輸送障壁の検証に発展した。ヘリカル系では強い非対称性のため、表面での電場分岐が必ずしも大幅な輸送係数の低減に繋がるとは限らない。そのため、プラズマ内部での輸送障壁形成が重要であり、それを可能とするのが電場界面であり、LHD実験の理解に資するものである。

電場遷移による自励振動

 電場の変化はプラズマ・パラメーターの変化をもたらすから、電場構造とプラズマ・パラメーターの結合した自励振動が存在することを二つの例を基に理論的に示した。一つは速い分岐を繰り返すものでELMがその例であるが、理論的にはより一般的に存在するものでCHSでその存在は検証された。もうひとつのタイプは加熱率の変動を伴うものである。いずれも、ヘリカル系プラズマの「定常性」に深く関わるテーマであり、LHD研究での重要課題を提示した。

C.輸送データ解析

NBI加熱データベースの構築

 5次元加熱シミュレーションでは、減衰過程における粒子軌道の効果を含む加熱分布を評価することができるが、評価するためにはスーパーコンピュータを用いた大規模な数値計算(>100時間)が必要である。このため、実際の実験において、実験結果を即座に解析するためには、簡単化された加熱分布の評価法が必要であり、NBI加熱分布データベースを構築した。

実験輸送解析コードの開発

 LHDのプラズマの輸送モデリングとして、LHD設計の当初より3次元平衡・1次元輸送の解析を進めてきてきた。これを更に発展させてLHD実験解析に適用する必要があり、ヘリカル装置では特に有限べータ効果による磁気面の変形と輸送特性の変化や、電場やブートストラップ電流を含めた平衡解析との比較、新古典輸送と電場の形成、異常輸送の理論的評価等検討すべき課題が山積している。これらのモデルを有する総合輸送解析コード「TOTAL(Toroidal Transport Code Linkage)コード」の開発を進めてきた。



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