3.4.1.1 電子サイクロトロン加熱

 電子サイクロトロン加熱(ECH)は当初の実験計画案の10MW/10秒と3MW/CWの運転を目標にしたシステムを設計し、開発研究と機器設置を進めている。平成10年3月31日にECHによりファーストプラズマの生成に成功した。

1 高圧電源・ジャイロトロン管・真空窓

 LHD用高圧電源の省力化、経済性、信頼性を特長とするGTO使用のジャイロトロン固体化電源を開発した。電源の固体化により従来の直列管陽極の水冷が不要となり、かつコレクター電圧リップルが5%以内と仕様が大幅に緩和されている。

 大電力定常ジャイロトロン管の開発は84GHzにて0.4MW/10.5秒、0.5MW/2秒を達成している。84GHzジャイロトロン管内蔵用モード変換器が開発され、変換効率90%を得た。パルス幅がサファイア製二重真空窓の温度上昇によるFC75冷媒の沸騰で制限されたため、新しく強制冷却付き窒化珪素真空窓の開発を試みた。新素材の持つ良好な熱的、強度的特性から定常通過電力密度8kW/cm2の試験に成功し、この真空窓をLHD用168GHzジャイロトロン管及びLHD入射窓に搭載している。寸法140mm×420mmの長円形ブリュスター窓を開発中で、完成すればこの植から1MW/CWの通過電力に対応できる。この新素材の特質に着目し、0.4MW/10秒、0.1MW/30分運転に供せるダミーロードを同時開発した。また、84GHzジャイロトロン管をコレクター抑制型に改良し、電気エネルギーを回収して45%の発振効率を得ている。

2 伝送系・アンテナ

 周波数84GHzと高調波168GHzが共用できる広周波数帯域大口径コルゲート導波管を開発した。混合モードHE11の伝送パターン確認と64m直線コルゲート導波管による実効長128m伝送にて2db/km程度の低損失を反射法から実証した。伝送系を構成する各種要素部品(マイターベンド、スライド導波管、偏波器、電カモニター)の設計検討と試験、要素部品性能評価のためのミリ波放射パターン解析コードを作成した。大型ヘリカル実験棟では加熱装置室からLHD本体まで光学整合ユニット、マイターベンド、偏波器を含む約100mの長距離伝送試験をジャイロトロン管出力380kWで実施し、61%の伝送効率を得た。
現在、伝送系内を耐電圧向上のため乾燥窒素または空気のフローを施しているが、大電力伝送限界値は伝送系内の低純度高次モードによるアーキングにより決まっている。出カガウスビームとコルゲート導波管混合モードの結合がビーム入射角と軸ずれについて解析され、発生する各種高次モードの分率が調べられた。最適ウエストサイズを持つ168GHzガウスビームでも88.9mm直径のコルゲート導波管へ0.1度の斜入射では1%のモード変換損失が生じる。
この解析の結果により装置室からLHD本体までの導波管設置に際して、自重、設置作業、点検時の架台によるたわみの量を0.1度以内の許容基準とした仕様にし、注意深い設置調整を進めた。真空容器内アンテナは4個のミラーにて構成し、最終ミラーが2軸可変であり、LHD本体磁場の影響を避けるため、駆動には遠隔制御超音波モータを採用した。計算機コードにより主半径方向方向15mm、トロイダル方向50mmのウエストサイズをもつ(図3-4-1-1)ガウスビーム集束ミラーを設計、製作、試験を行い、主半径方向に±200mm、トロイダル方向に±150mmの範囲で良好なビーム性能を得ている。

3 プラズマ生成・加熱実験

 第1サイクルでは磁場1.5Tで84GHzと82.6GHzジャイロトロン管から導波管入口にそれぞれ0.25MW、0.3MWの電力が結合され、長距離伝送後、電子サイクロトロン第2高調波異常波でLmに0.15MW、0.2MWを入射し、プラズマ生成と加熱の実験を行った。第2サイクルでは更に84GHzジャイロトロン管一台を補強し、1.5〜2.75Tの範囲でプラズマ生成・加熱及びNBIとICRFターゲットプラズマのためのプラズマ生成に供している。
生成された最高プラズマ線平均密度は3X1019m-3、最高電子温度は2.0keV、最高内部エネルギー36kJである。
1.5Tの磁場で入射ビームの主半径方向スキャンを行い、プラズマ生成と高温化へ至る条件は入射ビームの焦点位置が電子サイクロトロン第2高調波共鳴層のある磁気面中心付近の主半径3.78から3.80mの狭い範囲(図3-4-1-1)に限定されていることを観測した。生成プラズマの電子温度と密度から入射ビームはほぼ一回の容器内通過で大部分が吸収されている。磁気軸上2.2〜2.75Tでの生成実験は基本波の共鳴層が最外殻磁気面内に存在する限りプラズマが生成され、磁場の上昇とともにプラズマ内部エネルギーの増大があり、共鳴層の中心部への移動と関係している。定常化予備実験として高デューテイ変調モード(第1サイクル100msON、繰り返し1Hzと第2サイクル190msON、繰り返し5Hz)で120秒のミリ波入射実験を行った。また、熱パルス伝播や電力吸収分布の推定の予備実験として入射波の変調実験を行っている。

図3-4-1-1 アンテナ系と入射ビーム特性、プラズマ生成・加熱での入射ビーム主半径方向依存性



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