3.4.2 計測

(i)はじめに

 大型ヘリカル装置の計測は、LHD本体の設計、建設と歩調を合せて計画の当初より開発を進めてきた。その結果、LHD本体の設計特にポート設計に、また、LHD実験棟の設計に計測からの観点が大きく取り入れられている。LHDの計測では徒来の計測レベルから大きな飛躍が要求される。そのために必要な計測機器の開発・調整のために平成6年度に計測実験棟を整備し、ここでの積み重ねがLHD実験開始当初からの計測機器の速やかな立ち上がりに寄与している。ここでは、計測計画と主要計測機器の概要について報告する。

(ii)LHD計測の基本的考え

 大型ヘリカル装置のプラズマ計測の基本設計において考慮したことは、1)NBI(20MW)、ECH(10MW)、ICRF(3-10MW)の大電カ加熱装置からの電磁ノイズの影響を極力少なくし信頼性の高い計測を可能にすること、2)第2期計画として重水素を使った実験も検討しており、その場合でも大幅な計測システムの変更なく対応できるように第1期の計測においても配慮しておくこと、3)大型ヘリカル装置は超伝導磁場閉じ込め装置であり、通電開始後における装置への接近が制限されること、また、生成されるプラズマは定常プラズマであり、それに対応できるように対処すること等である。

 LHD本体から離して設置することのできる計測装置のために、本体室の厚さ2mの放射線防護壁の外側に計測機器室を配置した。機器室は3層構造であり、地下室には、機械的振動等を嫌うレーザー計測装置(トムソン散乱測定器、遠赤外レーザー干渉計)を設置した。1階はミリ波干渉計、電子サイクロトロン放射測定器等の導波管を用いる計測器を中心に配置し、2階にはCXRS、不純物計測等の分光計測を中心とする光ファイバーを用いる計測器を配置した。LHD装置本体と真空的に直結(または近接)して設置しなければならない計測器については、LHD本体の2m厚の床をシールド材として有効に活用できるように本体地下室に計測ステージを設け、そこに計測装置(軟X線波高分析装置、中性子測定器など)を配置した。水平ポートに取り付ける計測機器(中性粒子エネルギー分析装置、VUV/結晶分光器など)のためには、LHD装置の周辺に中間ステージを設けた。LHD本体周辺に取り付ける計測機器の鳥1敢図を図3-4-2-1に示す。

図3-4-2-1 大型ヘリカル装置計測機器配置図

 個々の計測機器の基本設計においては、ヘリカルプラズマの計測機器として以下の目標を設定し、その開発を行ってきた。

(1)ヘリカルプラズマが軸対称性を持たない3次元プラズマであるため、諸断面での2次元計測を行う。
(2)詳細なプラズマ中の分布計測を進める。
(3)ヘリカルプラズマに対し、電場が閉じ込めに大きい影響を持つと予測されるため電場計測を複数の手法を用いて行う。また、それらを用いて異常拡散の解明のための揺動等の計測を実現する。
4)計測手法の適用に大きな飛躍が必要な場合、可能なかぎりCHS装置などの支援装置を用いて開発を積み上げる。
(5)複数の計測器によるクロスチェックを行い、計測の信頼性を高める。
(6)LHDの特徴である定常プラズマ実験時の計測においては、計測窓や計測用真空容器内蔵物の冷却や積分回路を用いた計測器、データ取得の効率的運用などに配慮する。

等の目標を掲げて、表3-4-2-1にあるように約30のそれぞれ異なった計測機器の開発を行っている。計測法が実証されたものについては順次LHD装置への計測器の設置を進めている。

表3-4-2-1 LHD計測器一覧表

計測目的 計測器 備考
電流・エネルギー、
プラズマ位置・形状計測
磁気プローブ Rogowski、Mimov、
磁気ループコイル
プラズマ密度
プラズマ密度分布
プラズマ密度・密度揺動
ミリ波干渉計
FIRレーザー干渉計
ミリ波反射計
2mm/1mmマイクロ波、1ch
119μm-CH30Hレーザー、13ch
周辺密度・密度揺動
電子温度・密度
赤道面電子温度分布
赤道面電子温度分布
電子温度、不純物
トムソン散乱
高速走査型マイケルソン干渉計
ECEグレーティングポリクロメータ
X線波高分析器
130空間点
時間応答25ms
空間12ch、時間応答μs
20ch Si(Li), 4ch Ge検出器
イオン温度
イオン温度分布、回転
イオン温度分布
中性子束、イオン温度
中性粒子分析器
荷電交換再結合
X線結晶分光器
中性子計測器
垂直・水平掃引
中性ビーム使用
0.1-4nm、λ/△λ:104
NE-213検出器、3Heカウンター、
金属フォイル
放射損失分布
不純物、イオン温度
不純物2次元空間分布
中性粒子分布
ボロメータアレイ
真空紫外分光器
3m直入射分光器
可視分光器
金属フォイル、シリコン半導体
1,200nm、λ/△λ: 104
プラズマエッジ部
200-700nm、λ/△λ: 5×104
周辺プラズマ温度、密度
プラズマ位置、
リミター・壁温度
ラングミュアーフローブ
可視・赤外光TV観測
高速位置掃引、固定式プローブ
TVシステム
MHD振動
ミクロ不安定性
電場、電場揺動
粒子移送
軟X線検出器アレイ
ミリ波/FIRレーザー散乱
重イオンビームプローブ
計測ペレット
シリコン表面障壁ダイオード
1mm/195μmマルチチャンネル
Au- or Ti+、6MeV、100μA
トレーサー内蔵ペレット
高エネルギー粒子損失 高エネルギー粒子計測 Li/Heビーム(2MeV、10mA)
プローブ、粒子検出プローブ
水素リサイクニング Hαモニタ(垂直・水平分布) トロイダル・ポロイダル分布
プラズマ周辺部密度・揺動 リチウムイオンビームフロープ 空間分解能1cm時間応答1μs
不純物挙動 不純物モニタ He,B,C,N,O,Ti,Feモニター
放射損失トモグラフィー観測 赤外ボロメータカメラ 放射損失3次元分布
磁場計測 MSE分光 冷却CCD(384×576)
ダイバータ部粒子挙動 ダイバータ分光 Hα、SX分光
中性ガス圧力 高イオン型真空計 分解能10-5Pa、時間応答1ms

次に代表的な計測機器について以下に述べる。

(iii)主要計測機器の概要

(1)トムソン散乱装置
 ヘリカル系磁場配位の装置では、ポートの制約から通常用いられている90°散乱の光学系配位ではプラズマ全断面を計測することは困難である。そのため、どのような光学配位を採用するか、如何にして高い空間分解能を確保するかがLHDトムソン散乱装置の課題であった。そこでLHDでは図3-4-2-2に示すように後方散乱を採用し、長軸に沿った分布情報を得る光学系を採用した。

 この光学配位により、高い空間分解能(20-40mm、130点)を得、また、高繰り返し(50-300Hz)測定を特徴としている。一般にこのような後方散乱の光学配位では迷光対策が重要である。ヘリカル系装置ではトカマク型装置と異なりトーラスの内側にポート設置が可能であり、この特徴を生かして迷光の大幅な減少が可能となった。この装置によって測定された電子温度分布の一例を図3-4-2-3に示す。実験では、1ショットの放電において20ms毎にこのような分布情報が得られており、世界的にも最高性能を誇る計測器として稼動を開始している。

図3-4-2-2 LHD用YAGトムソン散乱計測の概略図
図3-4-2-3 電子温度分布の測定例 図3-4-2-4 電子密度分布の時間変化

(2)干渉計測装置

 LHDの電子密度計測器としてミリ波干渉計、遠赤外レーザー干渉計の2種類の干渉計を併用することによって信頼性の高い電子密度計測を目指している。ミリ波干渉計では、LHD本体まで往復約100mのビーム伝送となる。この長い伝送部における機械的な変動の影響を取り除くために、285GHz/140GHzの2波長干渉計を採用した。

 遠赤外レーザー干渉計は、波長119μmのCH30Hレーザーを光源に採用し、上下ポートを用いた13チャンネルのマイケルソン型干渉計である。上部の反射鏡と下部の干渉光学系を一体化するために高さ約20mの光学架台を採用することで、機械的振動の影響を低減することができた。干渉計によって得られた密度分布の時間変化例を図3-4-2-4に示す。

(3)重イオンビームプローブ

 ヘリカル系装置の閉じ込め特性に重要な役割を果たしていると考えられている電位の計測法として、また、局所的なタービュレンスの計測のためにHIBPの開発を進めてきた。LHDでは6MeVという高エネルギーの重イオンビームを必要とすること、ヘリカル系での複雑なビーム軌道の解析を必要とすることからLHD計画のスタートと同時に開発計画に着手した。高エネルギービームの開発として、JIPPT-IIUにおいて500keVのHIBPを製作した。ビーム軌道解析への対応についてはCHSにおいてビーム偏向器を採用することによって1ショットでのプラズマの電位分布の計測に成功するなどの成果を上げている。
現在、計測実験棟において6MeVのビーム加速を達成し、第3サイクル開始前のLHD本体への取り付けに向けてエネルギー分析器等の制作を進めている。

(iv)その他の計測器と新しい計測器の開発

 NBIビームを用いた荷電交換分光法によるイオン温度計測は図3-4-2-5に示すような配置で、ビームを見込む22チャンネルと同等な位置でNBIビームを見込まないポートでの背景光との差をとることによりイオン温度の空間分布を間を得ている。基本はCVI(529.05nm)のラインを用いるが、そのライン強度が弱いときにはネオンをパフして、近傍のラインNeX(524.90nm)を用いている。これらにより、既にルーチン的にデータが得られている。
図3-4-2-6に測定されたイオン温度分布の例を示す。また、ポロイダル回転も計測しており、径電場の導出が行われており、重イオンビームプローブと相補的な電場計測となっている。さらに、計測用の中性粒子ビームのモジュレーションを加え、荷電交換分光におけるバックグラウンド光を取り除き、より精度の高いイオン温度計測、プラズマ回転計測を目指しており、CHSでの予備実験を進めている。高速中性粒子がプラズマ中の磁場を横切って進む時に生じるモーショナルシュタルク効果を利用して磁場の向きを計測する手法も同時に開発している。

 また、VUV領域における2次元検出器を用いて空間時間分解能を持つ分光器を開発し、不純物の振る舞いについての情報やイオン温度についての情報が得られている。日米協カにより金属薄膜とIRカメラを利用した新しい2次元ボロメーターの開発を行い、CHSでの原理検証実験を終え、放射損失分布のトモグラフィー計測への可能性が開かれた。第3サイクルからの計測開始を目指している。

 トレーサー内蔵ペレットを用いて粒子の振る舞いを観測する世界的にも独創的な手法を用いた計測を平成10年にCHS実験において初めて適用し、その実証に成功した。プラズマ内で局所的にトレーサー粒子をデポジットできる点が特徴で、比較的簡単なペレット構造で行えることが実験的に示された。第3サイクル以降での計測実施を予定している。

図3-4-2-5 荷電交換分光計測の配置概念図 図3-4-2-6 荷電交換分光計測によるイオン温度分布の例

(v)計測器稼働の概況

 第1サイクルではミリ波干渉計による密度、X線波高分析器による電子温度、不純物ラインのドップラー巾から求められるイオン温度、磁気コイルによるプラズマ蓄積エネルギー、ボロメータによる放射損失など、基本計測器が稼働して、初期プラズマの基本的パラメーターを得ることができ、プラズマ閉じ込め特性が経験的スケーリングを上回る良好なものであることを示すことができた。

 更にこれらに加えて、第2サイクルでは、YAGレーザーを用いたトムソン散乱により空間130点の電子密度・温度分布の時間変化(50Hz)を得ることができるようになった。また、ECEによる電子温度分布の高速時間変化、遠赤外レーザー干渉計による空間13コードの電子密度分布の時間変化計測、荷電交換再結合光によるイオン温度分布計測など第2サイクルからは分布計測を中心に拡充が進んだ。また、荷電交換再結合光計測によりポロイダル回転も観測できている。データ処理でも1ショットあたり200MBを超えるデータの収集、蓄積が実現している。このように計測データを順調に得ることができ、物理解析の進展に貢献している。



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