3.3.3 大型ヘリカルプラズマ実験の長期ビジョンを支える開発研究

 大型ヘリカル装置計画においては、高性能の炉心プラズマを目指す研究、すなわち高nτETプラズマの発生や高べータプラズマの実現に関する研究はもとより、ダイバータを用いての定常プラズマの研究や高エネルギー粒子閉じ込めに関する研究を積極的に行い、トロイダルプラズマの総合的理解を深めることを目的としている。

 これらの広範囲にわたる重要な課題を一つ一つ遂行していくためには、既存の技術や手法のみでは困難であり、先進的ビジョンを持って長期的に開発研究を進めていく必要性がある。

(1)粒子制御法の長期的開発

1)連続的ペレット入射法
 LHDの定常プラズマ実験に不可欠な要素の一つとして、長時間にわたる粒子の制御が挙げられる。特に、粒子の補給について、ガスパフ法ではプラズマ中心部の密度制御が行えず、ペレット入射法の利用が是非とも必要である。しかしながらペレット入射法に関しては、長時間高繰り返し入射の技術は、抜本的開発を待たねばならない。遠心法、ガス圧打ち出し法、ドロプレット法などが侯補として考えられるが、最も実現可能性の高いと思われる遠心法につき、そのプロトタイプの設計製作が開始された。研究開発の後、CHSプラズマなどにおける特性テスト(平成7-9年度)を経て、持続時聞1000sec〜1h、繰り返し周波数1〜数10Hz領域での特性が実現され、特に第2期のLHD定常プラズマの研究に活用されることが期待されている。

2)ダイバータ動作シミュレーション研究
 ダイバータ動作に関する研究も、LHDの定常プラズマ実験に不可欠な要素の一つである。定常高密度プラズマ発生装置TPD-Iを用いれば、電子密度〜1020m-3,電子温度〜10eVの定常高密度プラズマを生成することができ、ダイバータ領域プラズマを模擬できる可能性がある。これらのプラズマを測定するために、現在までに高速掃引型のプローブの開発研究が進められてきた。今後、これらを用いたダイバータ動作のシミュレーション研究の進展が期待されている。

(2)新しい計測法の長期的開発
 新しい計測法の開発研究については、いくつかの課題が並行して進められている。
1)核反応計測法
 核反応計測法として、中性子計測法及び高エネルギー粒子計測法に関する研究を進めている。ここでは、LHDにおいて中性子や核反応粒子を高精度で計測する方法についての開発研究を行っている。これまで、JIPPT-IIUでイオン温度測定や中性子較正法の研究を行うなど、既存の装置において核反応計測の研究を行ってきた。同時に新型陽子反跳テレスコープ型の中性子スペクトロメータを開発し、現在はTFTRのDT実験での計測に使用している。
LHDでは、核反応計測を利用して高速イオンの閉じ込め性能等の物理情報が得られると考えられるため、今後、CHSやLHDにおいて中性子計測装置、損失高速イオン測定装置を用いた研究を行う予定である。

2)重イオンビームプローブ法
 重イオンビームプローブ法は、プラズマのポテンシャル計測などを目的として、近年、各地で開発されており、当研究所においても、LHD研究へ向けて開発研究が進められている。LHD装置での重イオンビームプローブでは、ヘリカル磁場中での三次元的ビーム軌道制御、6MeVビームのエネルギー分析法を中心課題として開発研究を行っている。
軌道制御に関しては、加速器及びエネルギー分析器前の双方に置かれたビーム軌道制御用のスイーパーを用いて、ビームを一点(分析器の入射口)に一定の入射角をもって導く方法を、CHSでテスト中である。これにより、さまざまな磁気面の静電ポテンシャルを計測する。MeV領域のビームの分析器として、従来の30度平行平板型分析器に代わるものとして、円筒型エネルギー分析器の理論的な解析を行い、試作品を製作中である。

3)計測用負イオン源
 さらに、高エネルギー重イオンビームプローブのための負イオン源及びストリッパーの開発が行われている。大型ヘリカル装置の重イオンビームプローブを用いたポテンシャル計測システムでは、およそ6MeVの重イオン(質量数〜200)のビームが必要とされ、負イオンをべースとしたタンデム加速方式が採用される。そのためには、高電流密度と小さいエネルギー分散を同時に満たすイオン源及びストリッパーを開発する必要があり、これまでに、ブラズマスパッター型重負イオン源を開発してきた。現在、ストリッパーでのエネルギー分散の研究を行っている。平成5年度には3MVタンデム加速器が導入され、実機での実験が計画されている。

 中性粒子ビーム入射によるプラズマ計測法は近年めざましく発展してきているが、大型装置になるにつれビーム減衰に対処するため高エネルギー化され、そのための負イオン源の必要性が高まっている。特に、DTプラズマにおけるアルファ粒子計測ではヘリウムやリチウム中性粒子ビームの利用が有望視されている。これまで、表面生成、体積生成を利用したリチウムとナトリウムの負イオン源を開発.し、ある程度の展望を得た。今後は、ヘリウム負イオン生成の展望を明らかにする実験を行うとともに、実機に採用しうる負イオン源を開発する予定である。

4)磁場分布計測
 磁場閉じ込め装置において、プラズマの内部の磁場分布は、閉じ込め性能やMHD安定性に密接な関連があるため、是非とも計測したい物理量である。近年磁場の局所値を測るためにモーショナルシュタルク効果を利用した磁場分布の計測法(MSE)や、ゼーマン効果を利用した磁場分布の計測法が考え出され、プラズマの中心付近の磁場分布が測定され、鋸歯状波(きょしじょうは)の物理モデルに大きな影響を与えた。
一方、ヘリカルプラズマでは有限べータ効果によって真空磁気面からのずれが生じるが、このずれを計測するために磁場分布の計測が必要になってきた。JIPPT-IIU及びCHSでは高時問分解の計測を主眼とし、荷電交換再結合を使ったゼーマン法とσ成分を使ったモーショナルシュタルク法の2方式を比較検討している。
研究計画における開発項目は、平成5年度にファブリペロー干渉計による高時間分解分光法の開発と光弾性変調器による偏光分離法の開発を行い、平成6年度にモーショナルシュタルク計測に必要な計測用中性ビーム開発を計画している。

5)荷電交換分光法
荷電交換分光システムは、現在JIPPT-IIU及びCHSに取り付けられ、イオン温度やプラズマ回転速度分布を計測している。このシステムは光ファイバー、分光器、256チャンネル2次元フォトダイオードアレイから構成されている。実質的な時問分解能は2次元フォトダイオードアレイ自体の時間分解能よりも、十分な光量を得るために数百Hz程度に抑えられてしまっている。ところが、分光器をファブリペロー干渉計に代えることにより、光量を1〜2桁あげることができれば、8kHzの時問分解能が達成できると予想される。このように時間分解能を上げて、プラズマ中で起こる速い現象(例えば遷移現象)でのイオン温度やプラズマ回転を測定し、その現象の物理過程を明らかにする計画である。

(3)新しい加熟法の長期的開発

 新しい加熱法開発の一つとして、コンパクトで安価な大電カビーム源の開発を目指して、アークジェットを用いた大電流超音速イオン源の研究が進められている。電磁型ビーム源は、静電型に対して原理的には圧倒的に優位であるにもかかわらず、いまだ電磁型の高性能ビーム源は実現していない。その一つの要因にイオン源の問題があり、電磁加速領域には常に超音速プラズマ流の供給が必要なことが初めて示された。この発見の実験的確認のため、出カイオン電流密度〜500A/cm2程度を念頭におきながら、アークジェットを用いて超音速イオン源を開発中であり、現在運転パラメータの調整中である。

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