3.4 実験の指針 -プラズマ診断-

 ヘリオトロンEが原理検証実験を目的とした装置であるのに比べ、大型ヘリカル装置は、炉心プラズマヘ精度よく外挿しうる高温プラズマを生成し、高温ヘリカルプラズマの閉じ込めを研究する装置である。このため、LHDはヘリカル系におけるプラズマ閉じ込めを解明していく上で必要十分なプラズマ断面の大きさを持っている。したがって、プラズマ閉じ込めを十分に解明できるように高性能かつ、狙いの鋭い計測器群の開発戦略を立てることが要請される。

 ヘリカル系におけるプラズマ閉じ込めの物理をプラズマ計測の立場から解明していくには、1)まず温度・密度等の基本量の詳細なプラズマ中の分布を測定できること、2)閉じ込めを決定していると考えられるプラズマ中のタービュレンスの詳細な測定が必要である。もちろんヘリカルプラズマは三次元的な複雑な形状を持っているため、いくつかの物理量(例えば、高速捕捉粒子や境界層プラズマ)は三次元計測を行う必要があろう。
しかし、長い閉じ込め時間を持つトカマクやヘリカルプラズマでは、磁気面の存在を想定できるので2つの次元を捨象でき、温度・密度等の基本量については、まずは詳細な一次元分布を開発目標とするのが現実的であり、必要なステップである。磁気面の変化は、複数の方向の一次元分布計測を組み合わせることにより推定できる。

(1)基本計測

 電子温度・密度等の詳細な分布を得るための基本的な計測器としてYAGレーザーを用いたトムソン散乱装置を開発している。単純な測定原理に立脚した信頼性の高い計測器であり、空聞的に200点を、約400Hzで分布計測を行う。これにより、例えば鋸歯状波(きょしじょうは)振動やECH局所加熱等を用いた摂動(perturbation)法による熱拡散係数の実験的決定を行う場合において、1ショットで拡散係数とその分布の変化まで決定できると考えられる。
したがって、YAGトムソンによりおおいに実験を加速できるとともに、信頼性の高い拡散係数分布計測が可能になる予定である。YAGレーザーを用いたトムソン散乱装置は平成2年にJIPPT-IIUで空間28点、繰り返し100Hzで分布計測を行うことに成功し、現在も使用しつつ改良に努めている。トムソン散乱として空間的に制約のあるヘリカル系でLIDAR法に似た後方散乱配位を考案した結果、楕円断面プラズマの長径方向全体を計測することが可能になった。
この配位による問題点を摘出し解決するため、LHDトムソン散乱の研究開発として空間30点、繰返し400Hzのトムソン散乱計測を平成6年度CHSで行う予定である。この数年来YAGトムソン散乱は世界的に広く使用され始めており、当研究所でその流行を作り出したと自負できるものである。

 また、時間分解能、信頼性等でトムソン散乱を補完し、クロスチェックを行ってより総合的に信頼性を高めるために、異なった原理に基づく遠赤外サブミリ波干渉計、電子サイクロトロン輻射(ECE)計測を行う。遠赤外サブミリ波干渉計において最も基礎となる遠赤外サブミリ波レーザーの市販品は出力、安定性の点で多チャンネル計測を行うにはまだまだ不十分である。サブミリ波領域のプラズマ計測に関してこれまで行われた国内の広範囲の共同研究に立脚し、平成元年からの共同研究では大出力遠赤外サブミリ波レーザーの開発に努力してきた。現在、世界で最大級の出力の遠赤外サブミリ波レーザーを開発している。(図3.4-1参照)

図3.4-1 開発中の遠赤外サブミリ波大出カレーザーとレーザー光伝送装置

 イオン温度の詳細な分布に関しては、JIPPT-IIU,CHSで開発してきた荷電交換分光法を用いて空問200点を、約60Hzの繰返しで分布計測を行う予定である。不純物のプラズマ中の分布は、真空紫外線(VUV)、軟X線領域でのSpace-Time-Resolved Spectroscopy (STRS)により、100視線(コード)以上の同時分光計測を行い、さらにそれを複数個用いてトモグラフィー法を行う。これにより種々の不純物、粒子のプラズマ中の詳細な分布が同時に計測できる予定である。
これらの不純物、粒子輸送の解明のためには、後で述べるような方法により能動的に不純物、粒子をプラズマ中の一点に発生させてその拡がりをSTRS型分光器を駆使して研究することが効果的であろう。

(2)揺動・輸送計測

 タービュレンスの詳細な測定に関して、重金属イオンピームプローブ(HIBP)は非常に局所的な計測を可能にし、特に非軸対称系の閉じ込めで重要になる電場の計測を可能にする。このため、6MeVのHIBPを開発している。タンデム型加速器での荷電交換反応の際のエネルギーの拡がりを抑える方法の開発等、非常に基礎的な開発を開発研究系で行う傍ら、JIPPT-IIU,CHSにおいて、それぞれ500keV及び200keVのHIBPを運転することにより、トカマク、ヘリカル系の電場とタービュレンスの性質の違いと閉じ込めを解明すべく、研究に努めている。

 これに加えて、タービュレンスの振幅と波数の決定に威力をもつ、ミリ波、サブミリ波散乱計を干渉計に併設する予定である。このためにも大出力遠赤外サブミリ波レーザの開発が重要である。またレフレクトメーターの開発も行っている。さらにラングミュアプローブや磁気探針を2次元的に配置しプラズマ表面のタービュレンス計測に利用する計画である。

 粒子輸送の解明のために、新しく内層部にのみ直径50〜100μm程度のリチウムなどの軽原子でできた小ペレットを置き、外層部を水素同位体とした複層構造ペレットによるプラズマ中心部及びダイバータ部を含むプラズマ周辺部における高精度粒子輸送計測法の総合的開発研究を開始している。この手法を確立するため、独創的な複層構造ペレット生成・射出装置(特許を出願中)の設計を行い、これに基づき試作開発を開始している。
複層構造ペレットの加速には2段ガスガン法の適用が侯補であり、保護用カプセルを用いないペレット加速としては3.3km/sの世界最高速を記録するなどの開発の実績がある。また、数値計算により1cm立方程度内の局所領域にペレット内層部の軽原子であるトレーサー粒子を溶発させることが可能であることを示し、具体例としてトレーサー粒子の振舞を荷電交換法等によりLHD等において計測する場合の評価を示し、十分な見通しを得た。

(3)データ処理

 詳細な分布計測やタービュレンスの計測を遂行すると大容量の実験データが発生しデータ処理の高性能化が必須になる。そのデータ量は現在のJETJT-60U等の大型トカマク実験で得られている数十Mbyte/shotを超えて約100Mbyte/shotになると予想している。それに加えて、大型ヘリカル計画においては、ECHを使用した定常プラズマ実験が重要な実験計画の一つであり、このときに多量のデータ量の発生が想定される。
また大きな磁場が定常的に発生しているため、装置へのアクセスが制限され、各計測器を計算機により遠隔操作する必要がある。したがって計算機により多数の計測器を遠隔操作しつつ、較正時や実験時のデータの処理を行うことになる。これらの課題に対応するため、平成2年度から中型計算機のクラスタリングやワークステーション群のネットワークの構成など、集中管理、分散処理のためのR&Dを行ってきた。また計算機による計測器の遠隔操作のR&Dとして、現在CHSにおいてHIBP計測の計算機制御を完成させようとしている。

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