3.5.1 定常プラズマ運転の切り札 -ダイバータ-

 LHDのようなヘリカル装置では、まずRF電力でプラズマを閉じ込め磁場中に生成し、現在鋭意開発が行われている中性粒子入射加熱(NBI)、又はECH, ICRF等の電磁波加熱(3.3.2節参照)によりプラズマ温度を5keV以上に上昇させ、高温プラズマを逢成する。加熱の必然の結果としてその大入カパワーがプラズマの熱となって周辺に達し、これをいかに処理するかが高温、高純度プラズマの維持にとっても重要な課題とな辰泙診に伴ってプラズマ粒子も周辺表面で失われ、粒子制御も問題になる。
さらに、周辺での粒子制御がプラズマ閉じ込め性能にも大きな影響を与えることが最近の実験で明らかになっており、その制御がプラズマ高性能化にとって極めて重要なものになっている。LHDでは、以下に述べるようにヘリカルダイバータ(図3.5.1-1)を中心にこれらの周辺制御を行うことになっている。

図3.5.1-1 LHDヘリカルダイバータ

 LHDヘリカルダイバータ設計を始めるに当たっては、まず三次元の複雑なダイバータ磁場構造の解析を通じてその物理機構を理解し、また、このような磁場配位における高エネルギー粒子の軌道も解析した。さらに、磁力線追跡中に粒子位置を垂直方向にランダムに変化させることで、プラズマの垂直拡散を模擬し、ダイバータ領域のプラズマ密度分布とダイバータ板における熱負荷分布を予想している。

 LHDではプラズマを内部に保持する真空容器の断面は亜鈴型で、トーラス方向にねじれた複雑な形状であるが、反面、亜鈴の頭部にバッフル板を設置すると、ダイバータ機能が最大限に発揮できる「閉じた」ダイバータ室がおのずと形成される。

 ダイバータ板は、ダイバータ室内にあってプラズマからの大熱流を安全に処理する装置であるが、20MW10秒パルス放電、3MW定常放電に対応できることを目指して、ダイバータ板の材質の選択、冷却方法の検討及びそのR&Dが進行中であり、現在その見通しが得られている。

 ダイバータの運転モードとしては、2つのモードを考えている。ITER等の設計で理想的と見なされてきた低温、高密度ダイバータ運転では、プラズマ熱流をより安全な形の放射エネルギーに変換して、熱負荷を下げることを目指しているが、LHDヘリカルダイバータでもそのモード運転が可能なように設計を行っている。また、粒子排気により周辺の温度を高めて、閉じ込めの大幅改善を目指す、高温ダイバータ運転を提案している。「無衝突ダイバータプラズマの理論研究」や「新しい水素排気方法の開発」等の研究、開発に加えて大型トカマクでの高温周辺プラズマの観測などの進展で、見通しが明るくなり、その実験への期待度がより高まった。

 高温ダイバータ運転は、高効率の水素排気を必要とするが、最近の我々の研究で、温度制御可能な、大面積のカーボンシートを真空容器ダイバータ部の表面に設置し、荷電交換したエネルギーの高い中性粒子を吸収することにより、30%以上の排気効率が理論的に可能であることを明らかにした。この排気法のLHDへの適用を目指して、技術開発を開始している。また粒子の排気が可能になれば、排気相当分を高速度ペレット(水素の氷)を使って、プラズマ内部に注入することができ、プラズマ密度分布の制御が可能になってくる。現在、当研究所では高速度ペレット注入装置mPEL(20連発)の開発を行っている。2段ガスガン方式で既に3.3km/secのペレット速度が達成されている。

 磁場配位が外部コイルにより定常的に確固として維持されているヘリカル装置では、プラズマを定常に維持できるかは、主として技術的な問題である熱処理を除くと不純物の混入を防いでいかにプラズマの純度を保つかにかかっている。ダイバータにより、不純物の閉じ込め領域への混入を最小限にすることが可能である。さらに我々は、LHDに適した真空容器壁の放電洗浄を開発中であり、また洗浄された容器表面にボロンなどのコーティングを行って、酸素等の不純物の抑制を目指している。現在R&D装置を使ってLHDに適用すべく、その開発を進めている。

 ヘリカルダイバータ以外にも磁気島(m/n=1/1)をダイバータ磁場配位とする、ローカル・アイランド・ダイバータ(LID)(図3.5.1-2)のLHDへの適用も検討している。LID配位では、磁気島内部にリミターヘッド的構造物を挿入し、その後面で熱、粒子流を受けて、除熱、粒子制御を行う。そして、この配位では排気効率が〜50%程度と高い値が可能となり、周辺温度を高めて閉じ込め改善を目指す高温ダイバータ運転が実現できる。また、ヘリカルダイバータとは違って、閉じ込め領域から「開いた」領域への遷移領域幅は〜1mmと小さく、両領域間の境界は、非常に明確になっており、Hモードで見られるような周辺閉じ込めの改善も期待できる。
閉じたヘリカルダイバータは、バッフル板等をトーラス全体に設置するため大がかりになり、それゆえに第2期で予定されているが、LID実験を第1期に行うことで、粒子排気がプラズマ閉じ込めに与える影響についての知見が得られれば、ヘリカルダイバータの最終設計にも反映でき、より最適化された形で実験が行える。また、LID実験を通して、新しいダイバータ概念の発展も期待でき、W7-X(ドイツ)のダイバータ構想にも大きな影響を与えよう。

図3.5.1-2 ローカルアイランドダイバータ(LID)

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