3.6 大型ヘリカル装置プラズマの本質に迫る物理解析

 核融合科学研究所発足とともに大型ヘリカル装置の物理設計・物理検討がさらに強力に進められてきた。大型ヘリカル装置は、良好な粒子閉じ込め、高べータ・プラズマ、ダイバータ設置の可能性の観点から最適な配位が追求され、平成2年度にはその装置基本パラメータが決定された。このような過程において理論的研究・物理解析の果たした役割は大きく、概念設計・物理設計・装置基本パラメータの選択等において重要な貢献をした。このような役割を果たせたことは、特定の装置に限定せず広く核融合研究を行ってきた結果であり、また、プラズマ物理に関する深い理解によるものである。したがってLHDプラズマの本質に迫る物理解析を現在も鋭意行うと同時に、ヘリカル系核融合炉を展望し、また、トーラス・プラズマを広く研究し、核融合プラズマの本質に迫る研究を行っている。

 LHDをはじめヘリカル系装置には幾何学的対称性はなく、それゆえ、ヘリカル系プラズマの研究は最も一般的である。このような一般性の観点から単一粒子の閉じ込めが徹底的に研究された。粒子閉じ込めの磁場配位依存性が数値計算・解析的手法により研究されロスコーンの構造が明らかにされた。とりわけロスコーンと径電場の関係が無撞着的に取り扱える理論が組み立てられたこと及び断熱不変量を用いた粒子軌道解析法の確立などは特筆すべき成果である。数値計算による粒子軌道解析はモンテカルロ・シミュレーションヘと発展し、ICRF少数(マイノリテイ)イオン加熱のモンテカルロ・シミュレーションでは高速イオンの損失も考慮して径電場生成を無撞着に決定するなど、この方面の研究はさらに発展させられ、特に、径電場決定の研究はトカマク研究にも大きなインパクトを与えた。

 電磁流体力学的(MHD)平衡と安定性の研究は装置設計にとって極めて重要である。平均化法やステラレーター展開法による解析や三次元メルシエ条件の解析などから5%以上の平均べータがLHDで可能なことが明らかにされ、また第2安定化領域の存在も確認された。さらにブートストラップ電流などのトロイダル電流が安定性に及ぼす影響も詳細に検討された。磁気島生成も計算できるMHD平衡コードを開発し、大規模なシミュレーションの結果、周辺部の磁気島生成と磁場配位の関係を明らかにした研究は世界に先鞭を付けるものである。また、ヘリカル系においても離散的アルヴェン固有モード(ギャップ・モード)の存在が明らかにされたことは、将来のヘリカル系装置での燃焼プラズマを考える上で重要な成果といえよう。この研究は完全三次元系でのバルーニング・モードの解析へと発展している。

 ヘリカル系では多様な磁場配位が可能であり、LHDにおいてもポロイダル場の制御により様々な配位を実現できる。新古典論的ブートストラップ電流は、軸対称トカマクでは磁場配位依存性はないが、非軸対称性トーラスでは磁場配位に対して極めて敏感である。ヘリオトロンでのプートストラッブ電流の配位依存性、特に磁気面の楕円度依存性が、世界で初めて定量的に明らかにされた。また、径電界が直接誘起する新古典的電流は、トカマクのような軸対称系では存在しないが、非軸対称系ではある条件下で存在することも初めて示された。この様な研究はヘリカル系ならではのものであり、トーラス・プラズマを一般的に包含する理論から生まれ、その結果、トカマク、ないしはトーラス系プラズマに対する理解を深めたといえる。

 核融合炉を定常的に運転するためにダイバータ設置は不可欠である。LHDの開放部・ダイバータ領域での磁力線構造が詳細に検討された。カオス磁力線領域の外周部に現れる髭構造とその引き延ばし過程・折り畳み過程やフラクタル磁力線構造などの発見は、大型ヘリカル装置にとって重要であるばかりでなく、数学的・力学的にも非常に興味ある結果である。周辺部やダイバータ領域におけるプラズマの流れや電流・電場などの構造などは、まずトカマクにおいて研究され、ついでヘリカル系に適用され、中性粒子の振る舞いやバッフル板の構造などが研究された。粒子軌道の解析から、大型ヘリカル装置では、閉じ込め領域から逃げる無衝突高エネルギー粒子(アルファ粒子など)はすべてダイバータ領域に流れ込むことが明らかにされ、トカマクと比べて優れた性質を持つことが分かった。

 LHDプラズマの閉じ込め性能を正確に予測することは最も重要な研究課題の一つである。とりわけプラズマの異常輸送の解明は重要かつ困難な問題である。この問題に対して、特にあらゆる角度から研究することが重要である。理論解析・実験解析・数値計算・局所的理論・大域的理論・ヘリカル系・トカマク等、あらゆる角度から研究を行ってきた。ヘリオトロン装置では周辺部は常に磁気丘であり、このため不安定となる抵抗性交換型モードが様々な角度から研究されてきた。圧力勾配と磁場曲率に起因するプラズマ乱流と異常輸送の大域的取扱いは興味ある発想であり、またレイノルズ応力による流れ、ないしは電場の自然発生の理論研究とシミュレーション研究は、電場や流れが閉じ込めプラズマにとって支配的な要因である事実と関連して特に重要である。

 このような広い立場からの研究は、トーラス全体に適用可能な理論的枠組みを構成できる可能性を与えた。非線形不安定性と非線形安定性の釣り合いによる自己維持乱流の研究がなされ、ヘリオトロン、トカマク、ステラレーターなどの配位に適用され、磁気シアーや磁気井戸の異常輸送への影響が示された。また、改善モードの研究、Hモード径電場分岐理論などが一段と発展させられ、トカマクでの理論をヘリカル系へ適用し、ヘリカル系でのHモードの可能性を論じたことはLHD計画の推進やトーラス・プラズマの一般的理解にとって大きな成果である。

 実験データ解析においても理論解析は重要な役割を果たした。CHSやW7-Aのプラズマ回転・径電場測定と理論計算の比較、CHSで観測された平行粘性の新古典的解釈などは特筆すべきものである。またヘリカル系に留まらずJIPPT-IIUなどのトカマクのデータ解析も併せて行うことにより、閉じ込め経験則やHモード、ELMy-Hモードなどの理解を一層深めた。これらを通して理論解析が実験研究に積極的に働きかけ、理論・実験双方が有機的に協力できたことは大きな成果である。

 LHDプラズマを中心とした物理解析では、多くの汎用的プログラム・コードが開発された。磁場コード、粒子軌道追跡コード、MHD平衡・安定性コード、MHD抵抗性安定性コード、非線形時間発展コード、プラズマ輸送コード、ブートストラップ電流解析コード、NBIやICRF加熱のモンテカルロ・コード、非線形固有値解析汎用プログラムなどはLHDの実験が開始されると実験解析に威力を発揮するものと期待される。

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